takeの感想文マガジン

映画・ドラマ・アニメ・読書・の感想・レビューを綴るブログです

幸せをつかむ歌

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メリルストリープが売れないロックミュージシャンを演じ、娘役に本当の娘が出演したことが話題となった作品。

他のバンドメンバーはほとんど本物のミュージシャンを起用しているという。

ギターも歌もメリル自身がこなすというのはさすが。

音楽的クオリティーも高い。

ただ若干、音楽シーンに力を入れすぎている感があり、ミュージカル調になっているのは残念。特にラストの結婚式のシーン。ロックとミュージカルは合わない気がする。

ミュージカルじゃないけど・・・。

トーリーは、家族を捨て、音楽活動に突き進んできたロックミュージシャンが年老いて、子供たちとの関係を見つめ直す話。

最近見た作品ではアルパチーノの「Dearダニー君への歌」も同じような話で、記憶に新しく、まあ、ストーリーに新しさはない。

そんなわけで、そこそこ面白かったけど、評価としては普通。

印象に残っているのはバンドメンバーのリックスプリングフィールドがメリルを励ますシーン。その言葉(セリフ)もさることながら彼のロックミュージシャンとしてのワイルドな風貌に、どこかアンバランスな優しげな目が深く心に残った。

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リックスプリングフィールド

 

あとはメリルの実の娘メイミーガマーのどんよりした顔。

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メイミーガマー

 

ソング・オブ・サンデー  藤堂志津子

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ジャンルでいえば比較的軽いラブコメに分類できますが、

私の好きな小説ベスト10に入る作品です。

本作の簡単な説明をするのに実にちょうどいいので、冒頭の書き出しをそのまま抜粋します

 

 

ドライブに行く約束の今日の日曜日だった。

 4日前の晩に電話をかけてきて、挨拶もそこそこにそれを言ってきたのは鉄治からで、利里子はとっさの事にまごついた。

 知り合って2年になるけれど、これまでいっぺんもそういった誘いを受けたためしはなく、だいたいが、そとで食事をしたり映画を観たりという間柄ではない。

 二週間か十日に一度、仕事帰りの鉄治がふらりと利里子の家に立ち寄り、玄関先で立ち話をしていく、といったつきあいがずっとつづいていた。

 

 

絵描きの利里子(42歳)と、彼女の自宅のリホームを手掛けた事で知り合った大工の鉄治。二週間か十日に一度、玄関先で立ち話をしていく関係を2年間続けた後のある日曜日。互いの飼っている犬を連れて初めてドライブデートに行って、帰ってくるまでの1日の話です。

 

藤堂さんの作品の真骨頂は男女の微妙な関係を描く事だと思います。最近の流行はみずみずしくもどこか白々しい純愛劇か、もしくはドロドロの愛憎劇、といった極端にデフォルメして描いているものが多いように感じます。本作はその中間の程よいところを平静にすり抜ける感じが逆にスリリングでドキドキするんです。実際のリアルな恋愛も「こういうもんだよな」と思います。しかし、小説やドラマなどのフィクション界ではポピュラーではないようで、あまり他にこういうところ描いたものって少ないんです。そこがまたいいんです。

文章は気取らない文体で読みやすく、言葉がすっと心に入ってくるんです。まるで小田和正さんの歌のように。それでいてシンプルな言葉の並べ方にもやはり、作家としてのウイットには富んでいて、そこかしこでクスっとさせられます。さらに、エンターテーメント性の強い比較的軽めのなんてことない恋愛ストーリーの中に、人生観をも揺るがすような心に響く一文がちょいちょいあるんです。そこがたまりません。

 

 その中の私の好きな一文を本文から抜粋してこの本の紹介とさせていただきます

 

 

「おばさんも。いえ、おねえさんも若すぎると思う?」

「そうねえ。むずかしいわねえ。若いと結婚に失敗するとも限らないし、結婚に失敗したからって、それで一生を棒に振るわけでもないし、たとえ一生を棒に振ったって、それはそれで一つの人生だし、でも、一生を棒に振るって意味が、そもそもよくわからないし、私は、トシこそくっているけど、若い人たちに適切なアドバイスをしたり、お説教をするってことがどうもできないたちなのよね。どうしてかっていうと私自身が全然人生をわかってないみたいで」

 

!少々ネタバレあり!

 

 鉄治はちょっとガサツな性格。すったもんだ道中いろいろあり。帰りに鉄治の実家に寄った際の事。実は鉄治はバツイチで20歳の息子がいる事が判明。元妻とは死別。息子は実家に預け別居中。その息子が就職するに事になり、身元保証人の印鑑を押すために立ち寄った。しかし息子の竜治から不意に18歳の彼女サチを紹介され、結婚したいと告げられ激怒。その空気に耐えられず家を飛び出したサチが、家の前の路上に駐車した車の中で待っていた利里子と遭遇した時の会話。サチは利里子を鉄治の彼女と思って・・

 

 

人生の成功とか失敗とか、勝ち負けとか、一時の事で判断はできない

 

そんなことを感じました。

海峡 伊集院静

 

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───少年にとって、父はそびえる山だった。母は豊かな海だった。

土木工事や飲食店、旅館などで働く50人余りの人々が大家族のように寄り添って暮らす「高木の家」。その家長の長男として生まれた英雄は、かけがえのない人との出会いと別れを通して、幼い心に生きる喜びと悲しみを刻んでゆく。瀬戸内海の小さな港町で過ごした著者の懐かしい幼少時代を抒情豊かに描いた自伝的長編小説。

「海峡」「春雷」「岬へ」と続く3部作の第1部───

 

大人になるにつれて、時間がたつのが早く感じる、という話をよく聞きます。

僕もまったくその通りです。

1日はおろか、1週間があっという間に過ぎ、あれよあれよと季節が変わり・・・

2~3年前なんて、ついこのあいだのように感じます。

それは大人になるにつれて五感のアンテナ感度が鈍っていくせいではないでしょうか。

 

この作品はまず、その五感をフルに使った情景描写がすばらしいです。

主人公の高木英雄は10歳の少年。その少年の目線で実に多彩な角度から情景をとらえていきます。

海峡の流れの描写から始まり

燕の巣を作ったり、大空を舞う鳩を追いかけたり、高木の家の中央にそびえる柳の木の葉の音に耳をすましたり、雲を人の姿にみたてたり、風の流れを読んで紙飛行機を飛ばしたり、虫を追いかけ、季節の匂いを感じ、野球選手のサインボールを見せる見せないで喧嘩したり・・・。

とっくに忘れ去っていた幼少期の感受性が呼び覚まされました。

僕も幼少期には、こういう感覚が確かにあったんです。

アリの巣をつついたり、メンコ、ベーゴマ、夏にはセミを捕まえたり、クワガタを捕りに行ったり、沼にはいって泥だらけになりがら夢中でザリガニを捕まえたり。

懐かしさと共に、失っていた心の感受性の大切さに気付かされました。

僕はこの話に出てくるような昭和(・・・)の(・)子供(・・)ギリギリ最後の世代(S47生)ではないかと思います。

4歳下の弟がいますがその弟はファミコン世代で、もうザリガニなんか獲ったことないといいます。

もう少し若い世代の人たちにはこういう経験はさらさらないでしょう。

だから悪いとか、今の子供たちは可哀そう・・・なんていう気はありませんが

ああいう幼少期を過ごせたことは宝物ような日々だったと思います。

 

高木英雄の父、斉次郎はほとんど家にいません。

だから英雄は周囲の大人たちからいろいろなことを教わります。

これがまたすばらしいんです。

この作品はサスペンスも、入り組んだ伏線も、大どんでん返しもありません。

全体的な評価としてはやや間延びしていると言えなくもないです。

世間一般的な人気がいまいちなのも、そのせいではないかと思います。

ただ、主人公の英雄が出会いと別れを繰り返し、ほろ苦エピソードが淡々と語られていき、その都度、大人たちが助言をくれるんです。

この助言が力強く心に響きます。

僕はこの作品読んだの、今回で2度目です。

最初に読んだのは文庫化された直後(平成14年)だから、もう15年前の事。

誰の助言が一番心に残ったか・・・前回と今回では少し違っていました。

この助言の数々、すべて紹介したいぐらいですが、まあ作品の肝なのでそこは読んでのお楽しみということで。

 

今回1番心に響いたサキ婆の言葉だけ紹介します。

「英坊ちゃん、人間はちっぽけなもんですぞ。ちっぽけじゃから大きい気持ちで生きて行かんといけません。あの山みたいに大きゅうにね。絵を描くことも大事でしょうが、もっともっと大事なことがありますぞ。それは生きて生きて生き抜くことです。山の爺さまが言っとったでしょう。いつも誰かが見とるって。サキ婆も遠い国へ行っても、英坊ちゃんを見とりますぞ」

 

この物語のテーマは、とにかく生きろというこではないかと思います。

人間生きていれば、つらいことや、悲しいこと、寂しいことはたくさんある。

そうであっても結局生きるしかない、ということではないか・・・と。

 

 

すっかり忘れていたけど・・・

キャッチボールの仕方、泳ぎ方、自転車の乗り方、逆上がりの仕方、

すべて父親が教えてくれたんだったな・・・僕の場合。

 

 

 

 

北の国から2002遺言

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今回は純が最後にしてようやく主役らしく描かれた作品でした。

前回「98時代」は完全に蛍と草太兄ちゃんの話でしたし、それ以前もどちらかというと脇役が締めてきた感のある北の国からシリーズです。

いままで主役ではあったけど、どこか主役っぽくなかった純でした。

それは純のキャラクターが、ドラマの主役としてはあまりに俗物っぽいというか、普通っぽいというか、熱血な正義感もなければ、クールなツンデレ俺様でもない、特別秀でた能力もなく、どちらかといえば地味で真面目で暗い性格でありながら、ずるさ、きたなさ、弱さもあって、実に平均的な普通の人間だったからではないでしょうか。

僕も、かなり似たところあります。あまり認めたくないけど・・・。

今回は、そんな純が、ようやく、ずるさ、弱さと向きあって、立ち向かおうとする姿に

心震えます。

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トーリーは書き出したら長くなるので省略します。

知りたい人はウキペディアでも見てください。

前編は、前ふりのようなものであまり心に響くシーンはないです。

特に、新加入メンバー、内田有紀唐十郎岸谷五朗の芝居がかった演技は鼻につき、

(演出的な何らかの意図があっての事で、役者さんに責任はないと思うのですが・・)

もしも北の国からシリーズ、まだ何も見ていない人は、2002遺言前編から見始めると、がっかりするかもしれません。しかし、後編は怒涛の感動が待っています。

いや、岸谷五朗の役どころをどう見るかで、この回の評価は変わりますね。

チンピラ風情で、暴力的でありながら、父親には弱く、妻(内田有紀)にも意外と未練がある感じで・・・なんだかよくわからない面倒くさい奴なんです。

まあ典型的なDV、ダメ男。時折見せる寂しげな顔に、意外にいい奴と思いがちだけど、やっぱりこういう男は許しちゃいかん!と思います。

しかし、ここにも一つの、不器用な親子の絆がある・・。

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僕はこの2002遺言、3回見ましたけど、1回目、タイムリーに見たときはこの岸谷五朗の感じが全く理解できず、作品全体の評価もシリーズ最低でした。

しかし、2回目、3回目と見たときは、自分の父親との関係性となんとなくリンクして、妙に心にしみました。

やはり、「北の国から」シリーズは親子の話なんです。

そして純の後半のナレーション。

 

「・・・・でも。ぼくはその父さんに感動していた・・・・父さん。あなたはすてきです。あなたのそういうみっともないところを,昔のぼくなら軽べつしたでしょう。でも今,ぼくはすてきだと思えます・・・・人の目も何も一切気にせず,ただひたむきに家族を愛すること。思えば父さんのそういう生き方がぼくや蛍をここまで育ててくれたンだと思います。そのことにぼくらは今ごろようやく,少しだけ気づきはじめてるンです。父さん。あなたは・・・・すてきです」

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ただただ、素朴に、家族を愛することを最優先に考える生き方。

仕事も、社会的地位も、名声も、財産も、家族の前では二の次。

うちの親も同じタイプの人間でした。

周りの友人知人の家庭の話を聞けば、両親の離婚、不倫、DV、別居、の話はごまんとあります。何事もない、平和で平凡な中流小市民家庭だったうちは、むしろ希少だったのかもしれません。

しかし、若いころはそんな親の生き方はつまらないと思っていました。

土日は常に家にいて、毎週『家族でおでかけ』に行こうとするんです。

「子供に依存するんじゃねえ!趣味とかねえのかよ!自立しろよ!」

なんてセリフ、はいたこともありました。思春期の僕は。

愛されていたのはわかるんですが、それはウザイ重荷にしか感じられなかったのです。

 

 

しかし今は、そんな親の生き方は素敵だったんだと思います。

そして僕は、幸せな家庭に育ったんだなあとつくづく思うのです。

北の国から98時代

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今回は前編・後編合わせて6時間と長い尺ですが、内容は比較的薄い印象です。

あくまで北の国からシリーズの中では、長い割には、という意味です。

トーリーのメインは

蛍の結婚と

草太兄ちゃんの死。

イムリーで観た当時、″草太兄ちゃんを死なすのは反則だよ倉本さん“と思ったものでした。

それは確かに、泣けるイイシーンにはなってますけど、

草太兄ちゃんは北の国からの大黒柱といっていい存在です。

それを死なすというのはもう終わりを意味すると言ってもいい。

そうすることでしか物語を盛り上げられないと言うなら、

倉本さんも焼きが回ってるんじゃないか・・・。

なにか、もっと、違う方法で盛り上げてほしいと、思ったものでした。

 

蛍の結婚について

 

不倫して駆け落ちした医者の先生との恋は終わり、

蛍は札幌で一人暮らしてます。

お腹には先生の子供がいて、先生にはその事を告げず、一人で生んで育てようとしています。

その事を富良野の人間で唯一、蛍から打ち明けられたのが草太兄ちゃんです。

「最近の若いもんはすぐ堕ろすとかなんとか・・」

「蛍みなおしたぞ。おら、お前の味方だ」

と、お金を貸してくれます。

その後、草太兄ちゃんは正吉を呼び出し

「正吉、蛍と結婚しろ」

「あいつの腹の中には不倫相手の先生の子供がいる」

「いいか、その事は五郎おじさんや純にはだまって、お前の子供として育てろ」

「五郎おじさんの気持ち考えろ」

「黒板家はお前にとって家族だろ」

正吉は、ほとんど迷わず、札幌の蛍のところに行き

「結婚してくれ」

とプロポーズをします。

「草太にーちゃんになんか言われたの?」

という蛍に

「草太にーちゃんは関係ない」

と、昔、子供の頃、蛍からもらった年賀状を見せます。

正吉が、五郎の丸太小屋で純や蛍と一緒に暮らしていた時

居候の正吉に年賀状が来ないのを気遣った蛍が、正吉宛に書いた年賀状です。

「あの時から俺の中にはずっと蛍ちゃんがいたんだ」

「言ったらいけないと思ってたけど」

 

───いいプロポーズじゃねえか正吉。

 

しかし蛍は

「気持ちはありがたいけど、それ以上言わないで」

と、断ります。

 

───まあ、それはそうだろうな。

 

その後、札幌でスナックをやってる母のところに寄った正吉は、

結婚したい女がいるんだけどまだ口説けてないと話します。

ちょうど有線から加藤登紀子「100万本のバラ」が流れていて

「女は押しに弱いもんだよ」

母みどりは「100万本のバラをあげよ~」鼻歌を歌います。

バラって1本いくらするんだ」

本気で計算する正吉

「5億かかるじゃねえか!」

と、富良野に帰ります。

そして正吉は、富良野のいたるところにたくさん咲いている

オオハンゴンソウという黄色い野草を毎日刈り取ります。

蛍のうちにオオハンゴンソウが大量に送られているカットがあり

その後、

ある日、家に帰ってきた正吉は改まって純の前に座り

「実は子供が出来た」

と言います。

「なんだ、堕ろすなら早くしたほうがいいぞ」

という純に

「結婚するつもりだ、相手は蛍ちゃんだ」

純は最初は怒りますが、まあ正吉ならいいかと、むしろ祝福する感じになり

その後3人で五郎にも報告します。

五郎も祝福してくれて、あとは順調に結婚式を迎えます。

この回はその蛍と正吉の結婚式がクライマックスとなる・・・

 

と、だいたいこんな話ですが・・・。

 

他人の子供がいる蛍にあっさり、葛藤も無くプロポーズした正吉をどう見ます?

普通は、この葛藤をテーマにしただけで、12話ぐらいの恋愛ドラマ出来ちゃいますよ。

最近韓国ドラマをよく見るのですが、韓国ドラマはだいたいがこういう要素含んでます。

主人公は実の親じゃない親に育てられ、愛情に飢え、復讐にかりたてられ・・

みたいな話ごまんとあるんです。

まあ、韓国ドラマはちょっと大げさ(劇場的)かと思いますけど、

それだけ重大な問題である事は間違いないはずなんです。

───その子供を本当に自分の子供と同じように愛せるのか───

という葛藤です。

その葛藤をまったく描かなかったのは、なんなのか。

正吉はほとんど迷わず、取るに足りない問題と判断しました。

純なら、ウジウジ、ネチネチ相当迷うところです

そこは、さすが正吉、男らしい。

と言うべきでしょうか・・・

思えば、正吉とは昔からこういう男だったんです。

正吉じゃなければ、このいさぎよさはリアリティが無いとも言えなくもない・・・

正吉じゃなければ成り立たない話です。

このシーンは、子供のころからの正吉を

ずっと見てきた人じゃないと府に落ちないかもしれません。

問題なのは蛍の気持ちです

一度プロポーズを断った蛍が、100万本のバラならぬ、100万本のオオハンゴンソウでころりと気が変わってプロポーズを受け入れる、というのをどう見ます?

 

イムリーで観た時は、まったく府に落ちなかったんです。

僕は、かねてより、花とか風船とか大量に送ってプロポーズするとか、電光掲示板貸し切って、愛してると表示させるとかいうたぐいの恋愛話は、バカバカしいと思うたちで、そういう事で、ころりと気持ちが動く女心というのも、全く分かりませんでした。

しかし、今回見て気づいた事があるんです

それは蛍がオオハンゴンソウで一杯になった部屋の中で、懐かしそうにオオハンゴンソウの匂いを嗅いでいるほんの一瞬のカットです。

おそらく蛍は、未婚の母になると決めた時、もう富良野には帰らない決心をしてたんです。

オオハンゴンソウの香りは蛍にとっても、子供のころから慣れ親しんだ懐かしい匂いです。

富良野への強烈な郷愁に襲われ、五郎や純や富良野の人たちが目に浮かび、これ以上背を向けて生きてはゆけない、と思ったのではないでしょうか。

仮に5億円かけて100万本のバラを送っても蛍の心は動かなかったかもしれない。

オオハンゴンソウだったからこそ蛍はプロポーズを受けたんだと

今回はじめて気が付きました。

それにしても

これだけの深い重いテーマを含んでいる蛍と正吉の結婚に至る過程のエピソードを

あまりにあっさりと描いているところは、

やはり「北の国から」は決して恋愛ドラマではない

という倉本さんの断固たる意思の表れではないかという気がします。

もう少し、今回は無駄なシーン多かったように思えたので、それならば、この部分を、

せめて蛍が正吉のプロポーズを受け入れるシーンぐらいは描いてもいいんじゃないかと思いましたが、やっぱりここはあえてあっさり描いたのでしょう。

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草太兄ちゃんの死について

 

僕は冒頭でも言いましたが、

イムリーで観た時

草太兄ちゃんの死については否定的でした

倉本さんの脚本家としてのやり方に対してです。

草太兄ちゃんの死のドラマとしての内容は、これ以上ないというぐらい有効な

イイシーンでしたよ。

確かに泣きましたよ。

純が草太兄ちゃんと喧嘩したような状態で

前日、トラクターを運ぶのを手伝えと言われたのを断って

一人でトラクターを運んだ草太兄ちゃんが

トラクターの下敷きになって死んじゃって

牛舎で純が頭をバコバコ打ち付けるシーンは号泣でした。

極めつけは

蛍の結婚式で草太兄ちゃんが生前スピーチ練習したカセットテープ流したシーン

 

そこまでして泣かせたいのかと

 

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しかし

今年はもう2017年です。

98年にタイムリーに放送された時代からさらに20年近く経ち

僕も″アラフィフティー”です。

それなりに身近な人間の死というのも経験してきました。

そういう立場であらためて見ると

このシーン、別に過剰演出の、劇的なドラマチックな、死に方ではないんですね。

こういう事は、誰しもが背負っている普通の事なんです。

あの時、ああ言えばよかったとか、なぜあんな事言ってしまったのかという後悔・・

祝い事と不幸が重なるというのも、リアルな現実によくありがちな話なんですね。

ようするに

反則的に″お涙ちょうだいに“に走っていたわけではなく

ごく普通の、リアルな現実の1コマを切り取ったに過ぎない

これまでと変わらない「北の国から」の平凡で、素朴な話だったんです

 

純とシュウのシーンについては今回はノーコメント。

まあとりあえず、お付き合いは続いているようです。

 

その他にも、草太兄ちゃんの農業拡張問題、

有機農法に挑戦し失敗した完治と農業の厳しい現実

など、見どころはたくさんありますが

総評としては、若干テンポが悪く、間延びした印象でした。

 

北の国から95秘密

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この回は純と蛍の恋愛話がメインです。

前にも話しましたが、僕は「北の国から」の恋愛パートはあまり好きじゃないのですが。

されど、やはり倉本さん。さすがのイイシーン要所にちりばめられていて

何度見ても、引き込まれます。

 

───大竹しのぶがイイ

今回、蛍は札幌の大学病院の先生と不倫したあげく、

病院を辞めどこかに駆け落ちしてしまいます。

その不倫相手の先生の妻、という役どころの大竹しのぶ

まず、こういう役どころに大竹しのぶを起用するあたりが他のドラマと違います。

安っぽいメロドラマなら、いや大抵のドラマなら、

主人公の家族のところに、眉毛つり上げながら乗り込んできて、

髪の毛でもつかみかかりながら、ワーワーとまくし立てるような役どころですよ。

しかし、そこはなぜ大竹しのぶを起用したのか、すぐわかります。

静かに、五郎さんの家にやってきて、

蛍の大学病院の婦長とだけ名乗り、蛍の住所を聞き出します。

年賀状が届いていて、駆け落ち先の住所が書いてあるのを、

五郎さんは喜んで差し出します。

その後に、「黒木です、黒木の妻です」と名乗りますが五郎さんは

「いや~お世話になって」

とまったく事情を知らない様子。

 「責めるつもりで来たんじゃないんですよ」

といいながら、大竹しのぶは静かに淡々と事情を説明します。

本当に一切責め立てたりはしません。

それどころか

 「たぶん主人が悪いんでしょう」

と、ショックを受ける五郎をいたわります。

そして、「お邪魔しました、帰ります」と、静かに帰ります。

バス停まで送って行った五郎さんに

「お願いがあります。ここから蛍ちゃんに電話してください。それで主人に代わってもらってくれませんか」

と、突然、切羽詰まった様子で言いだします。

そんな様子に気おされた五郎さんは有無を言えず電話をかけます。

携帯はまだない時代ですから。公衆電話からです。

蛍が「もしもし」と出ると、横から手を出して慌てて電話を切り

 

「バカねえ、私ったら。なにしてんのかしら」

 

したたかさ、強さがありながら、平静を保とうとするプライドもあり、しかし、にじみ出る悔しさ、弱さ、寂しさもあって・・・。

短いシーンの中で、揺れる複雑な心理が心に響く深い演技でした。

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───蛍に会いに行ったシーンがイイ

新巻鮭を渡して

「蛍~いつでも富良野に帰ってくるんだぞ」

と叫ぶ、この回1番の名場面です。

 

大竹しのぶ来訪によって蛍の不倫と駆け落ちの事情を知った五郎さんは、

純と一緒に根室にいる蛍に会いに行きます。

蛍と会った五郎さん

「もうなんでもいいよ。誰に迷惑かけようが、自分に正直に・・」

「いいとか悪いとかじゃなくて・・世間的にはよくない事かもしれないけど・・」

「父さんに対して、申し訳ないなんて、思うな」

「お前が何しようと、おらぁ、お前の味方だ」

「だから、余計な事考えないで・・しちまった事、後悔せんでよう」

 

僕は、ただ優しいだけの五郎さんにはやや否定的でしたが、

この時の五郎さんの言葉には胸を打たれました。

わかっちゃいるけど、どうしようもない、蛍の気持ちを察して、

余計な小言はみじんも言わないと、瞬時に腹を決めて発した言葉だったのでしょう。

こういう機微は、まだまだ純よりもずっと大人ですね。

 

昔、子供の頃の純に、時に殺伐とした気骨を持って接した五郎さん。

最近ではすっかりその影は潜め、優しいけれど、

どこか弱々しく、小さく見えていた五郎さん。

いやいや、なんの、懐深く大きな五郎さんが、そこにいました。

 

帰り際、新巻鮭を買って蛍に持たせ五郎さん。

去っていく蛍の背中に

「蛍~いつでも富良野に帰ってくるんだぞ~」

蛍は、関を切った様に涙があふれ出し、駆け戻ってきて

「私だって、本当は、毎日自分を責めてるの。でもどうしようもないの」

「ごめんなさい」

 

この時の蛍の演技も泣けました。

それまで口を一文字に固く閉じ、世の中すべてを敵に回して戦っていたかのような蛍。

あの可愛かった蛍が、どうしてこんな女になっちゃったのかと、悲観的に見ていた人も少なくないでしょう。

しかし、僕の目には、蛍は、昔からこういう女でした。

母さん(いしだあゆみ)が富良野に来て、帰る時、正面から見送りに行かなかった蛍。

悲しい時、辛い時ほど、毅然とした、凛とした態度で背を向ける。

そんな蛍は、本当は、やさしくて、情が深くて、弱いんです。

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───純がレイちゃんの結婚式を影から見送った場面イイ

今回、純とレイちゃんは一応付き合ってる感じです。

札幌と富良野で中距離恋愛して、月に一回ぐらい会っているようです。

今回も、レイちゃんが富良野にやってきて久々のデート。

しかし「プロポーズされちゃった」「大人の、ビジネスマンに」

と言われ

「へえ、よかったじゃねえか」

と言ったきり、明らかに不機嫌モードになる純。

そもそも、最近のデートはずっとこんな感じで、

会っても会話は弾まずギクシャクしているそうです。

あの「思いでの小屋」がある八幡丘を一緒に歩き。

突然、草むらでレイちゃんを荒々しく押し倒す純。

純は、ふてくされた態度で

「結婚すれば。その大人と」

「本気でそう言ってるの」

「ああ、そいつのほうがふさわしいと思うよ」

と吐き捨てるように言います。

その後、純はシュウ(宮沢りえ)と出会い、イイ感じになり。

レイちゃんとは、自然消滅って事?

すいません。本当に「北の国から」恋愛パート、いまいちよくわからなくて。

結局、シュウともいろいろあって、ギクシャクした頃

レイちゃんから電話があります。

「今日の午後、お嫁に行くの」

「よかったな、おめでとう」

と純は心から、優しく言いいます。

純はもう、レイちゃんの事は吹っ切れた様子です。

しかしレイちゃんは、明日結婚するという花嫁が、純のところに電話してくるとは?

未練タラタラ?マリッジブルー?愛の無い政略結婚?単なる挨拶?

ちょっとよくわかりません。

純もその感じ察して、半分冗談で

ダスティンホフマンの卒業、やってやろうか?」

レイちゃんも「やってやって」とまんざらでもなく、

式場の場所と時間教えてもらいます。

かくして、純はレイちゃんの結婚式に行き、こっそりと木影から見守ります。

しかし結局、「卒業」はやらず、ただ見送ります。

「不思議と気持ちの落ち込みはなかった。淋しさはあったけど」

「レイちゃんへの愛がはじけて、別のものになった気がした。別の、もっと深いものに・・」

「レイちゃん。おめでとう。綺麗だったよ」

 

なんだろう、このシーン。

むろん純は、昨晩の電話もらった時すでに、レイちゃんの事はふっ切ってるようでしたから、

まあ、「卒業」のごとく、さらわなかった気持ちはわかります。

問題はレイちゃんの気持ち。果たしてどうだったのか。

おそらく、本当にさらってほしかったのではないか。

そう思うのは、男の都合のいい解釈でしょうか?女性のみなさんどう思います?

僕の勝手な妄想です。

レイちゃんの結婚はおそらく、政略結婚的な要素があり。

レイちゃんは、純の事がまだまだ本当は大好きだが、純のほうにその気がない感じは分かっていた。ならば、親の進めるこの縁談に乗る事も悪くはないし、もしかしたら、純の気持ちを取り戻せるかもしれないという、最後の大きな賭けでもあった。

最後、車に乗り込んだときに見せたあの涙は・・・そんなレイちゃんの

賭けに敗れた悲しさ、一つの恋の終わり、青春の終わりを感じた寂しさ。

新たな人生への覚悟。そんな気持ちが入り混じった涙で、決して幸せいっぱいの涙ではなかったのではないか・・・。

あくまで勝手な妄想です。ホントこのシーン、意味よくわかりません。

でも、そこがイイんです。

誰しも、若い頃、実際にこういう経験の一つや二つあるんじゃないでしょうか。

相手の気持ちがはっきり分からず、妄想をふくらませ、しかし結局よく分からないまま。

未練の残る相手の結婚式に出席して、苦笑いで「おめでとう」なんて言ったりしたり。

 

純が本当に「卒業」のごとくさらってたら、B級メロドラマに認定しなければならないところです。ただ見送ったところが、さすが「北の国から」らしいところ。S級ドラマです。

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───シュウとの話をどう見るか

レイちゃんとの関係が自然消滅していた頃

純は、シュウといい関係になっています。

しかし、シュウが昔、東京でAVに出演していた事が発覚します。

そこで草太兄ちゃんの言葉

「お前が知ってる事を、相手は知らん。自分の過去を知らんと思ってる。ずーっとそう思わせろ。知らんぷりを通せ。その事を話したり。ほのめかしたり、責めたり。絶対にしたらいかん。惚れてるならそうしろ。それがやさしさつーもんだ」

しかし、純はそれが出来ず、あからさまに不機嫌な態度を見せ、

ネチネチと遠回しに、シュウの口からその事を言わせようとするんです。

「隠し事は好きじゃない、隠されるとかえって気になるからな」

「何を隠してるっていうの」

「隠してないならそれでいいよ」

そうして、また二人の関係はギクシャクし始めます。

なんでこんな純がモテるのか、意味わかんないけど・・・

 

シュウは、五郎さんと温泉に入り

「純君ともうダメかもしれない」

と寂しげに話します。

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それで五郎さん、純の家を訪ね

「お前の手の汚れはせっけんで落ちる」

「でも石鹸で落とせない汚れもある」

「人間長くやってりゃ、どうしたってそういう汚れがついて来る」

「お前にだってある。父さんなんか汚れだらけだ」

「そういう汚れはどうしたらいいんだ」

五郎さんの、必死の説得により、

結局、純は遠回りして遠回りして、やっとシュウを受け入れる事が出来て、

仲直りできる。という話ですが。

 

そもそも、純はなんであんなにネチネチとやさぐれたのか?

その純の気持ちをどう解釈します?

他の人たち、(正吉、草太兄ちゃん、美保純、五郎さん)は3秒で、取るに足りない過去と判断したのに。いったい純はどんな気持ちだったのか。

自分の彼女が過去にAVに出演していたと知ったら。

もちろん、一瞬落ち込むかもしれないけど。

誰だって、処女でもない限り、過去に誰かとHなことしているわけで、

それが、1人か、10人か、50人か知らないけど、

AVに出演した事なんて、カメラがあるか無いかの違いでしょう。

大事なのは、やっぱり現在の彼女がどういう人間かであるということ。

ここまで3秒で、だいたいの男は決断出来るんです。

それは、あくまで頭で考えた第三者的な綺麗ごとで、

当事者にとってはそう簡単に割り切れるもんじゃない

という事を倉本聡は描きたかったのかな・・。

あと、

純は、思うに純血主義なところがあるのかな。

中学の初恋のレイちゃんをいつまでも引きずってるあたり、

僕からすると、さらさら分からない感覚です。

さらさらとは言いすぎですが、純血主義も男の心の奥にちょこっとある事は認めますよ。

しかしまあ大抵は、純血もねえ・・いいけど・・それはそれで重いよねえ・・・

と考えるのが普通です。

自分だって、いろいろな過去があって、他の女性といろんな経験してきてるんですから。

純だって相当な過去ありますよ。

タマコ(裕木奈江)を妊娠させて堕ろさせて、かぼちゃもって謝りに行って

「誠意って何かね」

って言われて。

タマコとちゃんと向き合えなかったのもレイちゃんが純の中にいたからで。

あれは僕はさらさら理解できませんでしたが。

「中学の時の初恋の相手なんか、いつまでもネチネチ引きずってるんじゃねえ!!」

と、あの時代、裕木奈江、好きだった僕は、純ふざけんなと思いましたから。

しかしまあ、結局純の中にはいつもレイちゃんが純血の象徴として綺麗に存在していて、

その他のリアルな人間の女はどこか汚れた存在に見えていたのかな・・・。

ましてAV出演なんて、到底受け入れがたい、ということなのか。

レイちゃんとはっきり終わった事と、まわりのみんなから一生懸命説得されて、ようやく、遠回りして遠回りしてシュウと真剣に向き合う気になれた。

ということなのかな・・。

「今度の日曜、山辺山麓デパートに行かねえか」

純がシュウに言った時

「遅いんだよ!!!」

と思わず、突っ込んでしまいました。

まあ、遅くても、ギリギリ間に合ってよかったけど。

 

重ねて言いますが、僕はやはりどーも恋愛パートに関しては、

特に純とレイちゃんの恋の話は、最初から最後までいまいちピンときませんでした。

お互い何がイイの?そして何がダメだったの?と思ってしまって。

みなさんはどう思います?

 

 

 

北の国から92巣立ち

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この回から前篇・後篇の2部編成となり、エピソードも盛りだくさんになってきます。

しかし、一連のシリーズ、最初から見てくるとこの回、比較的軽く感じます。

 

それは、この回あたりから五郎さんが、コミカル路線に走りだし、初期のころの時折見せる眼光の鋭さはすっかり影をひそめ、ただただ優しいお父さん、純と蛍の帰りを待ちわびる寂しげなお父さんになっている事に起因していると思います。

 

五郎さん。ちょっと老けこむのは早いですよ。

 

純と蛍はこれからまさに「巣立ち」青春時代を謳歌しようという時。

そういう時にオヤジにしょぼくれられたら辛いですよ。

芝居でもいいからもう少し子供に気を使わせないような、

気丈なふるまいをしてもらいたいものです。

 

さて、今回はいちいちストーリー説明しているとかなりの長文になってしまいそうなので

印象的なシーン箇条書きに羅列していきます。

 

蛍は、旭川の看護学校に通いながら、帯広の勇ちゃん(緒方直人)と中距離恋愛?

を続けている。

途中富良野で乗り換えるのだが、改札は出ず、あえて素通り。

ずいぶん家には帰っていない。

その事を後ろめたく思いながらも実家に足が向かない。

五郎は、来年、蛍が卒業後は富良野の病院に就職すると思いこんでいて、

その事ばかり楽しみにしている。

蛍は実は、来年は札幌の大学病院で働き、正看護婦の資格を取ろうと考えているが、

それが言いだせない。

はっきりいって五郎と会う事に、気が重いのだ。

ある日、帯広からの帰り、富良野で電車を乗り換えた蛍は、数年ぶりに正吉に再会する。

正吉は自衛官となりますます男らしくなっていた。

正吉は「おじさんとこ行ってきたのか?」と当たり前のように聞くが

蛍は、ただ乗り換えてるだけでもう何か月も富良野の改札は出ていないと話す。

蛍は、今日ここで(富良野で)会ったことは内緒にしてほしいと言う。

正吉は、純も東京に出ていて、五郎が富良野に一人でいる事を知り

顔を曇らせ「絶対に言わねえよ」と蛍を責めるように言い捨てる。

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夏祭りの時、久しぶりに富良野に帰った蛍だったが、結局、五郎の家には泊らず

日帰りで旭川に帰ってしまう。

ガックリしょぼくれる五郎だったが、

「おじさんと飲もうと思って」と正吉が酒を持って来て、蛍のかわりに五郎の家に泊まる。

そして子供の頃迷惑をかけた事を謝り

(母みどりの借金を肩代わりさせた事。丸太小屋の火事の事)

「これから少しずつ返していきます」

と2万円を渡す。

いらないと返そうとする五郎に

「俺、おじさんの息子と思ってますから」

 

クゥ───やっぱイイ男だぜ。正吉。

 

 

草太兄ちゃんの結婚式。

トラクターで登場中の新婦アイコ(美保純)が流産。

病院での清吉(大滝秀治)の言葉。

「あいつはバカだ。考えりゃあ分かることだ」

「妊娠5カ月でトラクターに乗せて・・・」

「でもワシ止められんかった」

「あいつがバカみたいにはしゃいでる姿見て」

「どうしてもワシ止められんかった」

 

過疎の酪農の家に、ようやく来てくれたお嫁さん。兄たちは都会に出ていき、草太も若い頃は嫌で嫌で仕方なかったのが、なんとか留まって。医者にはダメかもしれないと言われていた子供を授かって、絶頂に浮かれる草太。八幡丘でド派手な結婚式を開催。自分は馬で登場して、アイコはトラクターで登場する。みんな「バカだなあ~」と思いながらもそこに水を差す人はいない。草太の気持ちがわかるから。ずっと苦労してきた草太の気持ちがわかるから。看護婦見習いの蛍だけは「トラクターに乗せるの止めたほうがいい」とはっきり言うが、聞く耳持たない草太にそれ以上は言えない。そして案の定・・・流産。

 

あえて冷たく言えば人災ですよ。明らかに防げた人災。

みんなが草太を思う気持ちがもたらした人災です。

しかし、これがリアルなひとの人生というもの。

他のドラマでこういう事あまり描きませんよ。これが倉本聡の真骨頂だとおもいます。

ただ悲しい事故で涙を誘ってるわけではないんです。

そこに生きた人間の想いを描いているわけです。

 

人生は人の気持ちでうごいてるんだなあ

そんな事、感じました。

 

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東京の純。タマコ(裕木奈江)との恋の末

タマコ妊娠。堕胎。

タマコのおじ(菅原分太)に呼びつけられ

かぼちゃを差し出しひたすら謝る五郎と純に

「誠意って何かね」

と、あの名セリフ。

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五郎は自分の家の丸太小屋のために用意してた丸太100本300万円で売る決意。

3年間、こつこつ一人で皮をむいてきたあの丸太。

大工の棟梁(大地康雄)「どうするんだそんな金。あんたには大金だろう」

五郎「大金だ。ギリギリの大金だ。誠意ってやつさ」

 

結局、五郎が送ったその金はタマコから純に返される。

タマコ「誠意はわかったから、受け取れない。おじさんがそう言ってた」

タマコ「私たちもう大人なんだし、自分で決めて行動したんだから自分たちで責任取らない と・・私、純君とのこと後悔してないから」

 つとめて爽やかに、去っていくタマコ。

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なら初めからそう言ってくれよ

 

思わずそう思ってしまいました。純もそう思ったのではないかと思います。

しかし、そういうものでもないのでしょう。

やはりこれもすべてが必要なギリギリのプロセスだったのかな

(タマコがそう言えるようになるまでのプロセス)・・・そんな事を思いました。

なんとも言えないシュールな話の連続です。

 

そして、この回「92巣立ち」はここからの話がいいんです。

北の国から」というシリーズ全体のメインテーマが集約されている

名場面へとつながっていきます。

 

丸太を失った五郎は、石で家を作ることを思いつく。

開拓時代に排出した石の山がそこいらじゅうにあるを見て。

大きな風呂に入りたいと風呂だけ先につくったのはいいが水が無い事に気づき、

ならばと自力で井戸を掘りはじめる。

中畑や棟梁はどう頑張っても素人に井戸なんて掘れるわけないと変人扱い。

純と蛍が正月に帰ってくるのに間に合わせたいと思い、必死にがんばった五郎。

ついに井戸を掘りあてた。

 

大みそかに帰ってきた純はタマコから返されたあの金を五郎に返す。

が五郎は受け取らない

「俺にも意地がある。一度やったもんはいらん」

しかしそれは怒ってるわけでも気を悪くしてでもなく

不敵に、にこやかに笑いだし

「金を失って、オイラ、でっかいもんをみつけたんだ」

「ずっと忘れてた、大きな事を思い出したんだ」

「金があったら、そうはいかなかった」

「何?見つけた事って」

「金があったら、金で解決する」

「金が無かったら、知恵だけがたよりだ」

「知恵と、てめえの持てるパワーと・・」

 

蛍を駅に迎えに行く五郎と純。

改札を出てきた蛍を大喜びで迎える五郎。純。

が、蛍の顔は固い。背後に勇ちゃんも来ていた。

とりあえず富良野の病院の先生のところに挨拶に行こうという五郎に

蛍は先延しにしていた札幌の大学病院で働きたいという話をする。

これからすぐに帰れず、勇ちゃんと札幌の病院の先生に挨拶に行くと。

ガックリ肩を落とす五郎。純と二人で家に帰る。

五郎と二人きりの純はたまらず車を借りて蛍を迎えに行く。

一人残された五郎は、石の風呂に行く。

あたりは吹雪。風呂の水は氷っている。

屋根には大量の雪。雪下ろしをしようと屋根に登った五郎。

足を滑らし落下し、木材の下敷きとなる。

身動きできない。

その頃、純は蛍を連れ、家に戻ってくる。

が、五郎はいない。純と蛍は、石の風呂の事は知らない。

夜中になっても帰ってこないことに、おかしいと気づき。

ようやく探し始めるのが夜中の2時。

中畑や棟梁の家を回り、結局、見つかるのは朝方。

五郎は、マイナス20度の吹雪の中、8時間さらされていた。

が、奇跡的に助かる。

翌日、みつけてくれた大工の棟梁にお礼のあいさつに行く純と蛍。

「医者も奇跡だって言ってました」

そして大地康雄扮する大工の棟梁の言葉。

「それは違うな・・・それは違うよ」

「奇跡なんかじゃない、犬を抱いてたせいでもない」

「身動きできなくなった体で・・」

「おそらく、その針金で、シートを手繰り寄せ・・」

「こう、体におおって、吹雪から身を守り・・」

「これを見てみろ」

スコップ。柄の部分が削られている

「木を削って、燃やそうとまでしてる」

「あいつは自分で生きたんだ」

「お前ら若いもんにこの真似が出来るか」

「お前らだったらすぐに諦めてる」

「諦めて、とっくに死んでる」

「あいつはすごい」

「たった一人で・・・」

「俺は涙が出る・・本当に涙が出る

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この後、蛍は札幌に行くの止めると言いだす。

純は、今更そんな事言っても父さんは傷つくだけだだから

蛍は黙って札幌にいけと言う。

そして、今度は俺が富良野に残ると。

「前からなんとなくは考えてたんだけど、棟梁の言葉で決心がついた」

 

「なんとなくだけど、やりたい方向性が見えてきた気がするんだ」

 

金では買えない大切なもの。

知恵と、自分の手と足と、根気。

お金は無くとも、素朴に、力強く生きる五郎の生き方を

純も素敵に思えるようになったということだ

と思いました。