「北の国から87初恋」ドラマ感想
純と蛍、おおきくなってきました。中学生です。
レイちゃん(横山めぐみ)との恋の話。
トラックの運ちゃん(古尾谷雅人)の名シーン
泥のついたピン札の話です。
~~完全ネタバレです~~
――冒頭、純はクラスメイトから「ペンチ」とあだ名をつけられ分解小僧になってます。
(機械製品を何でも分解してその構造を調べたり、修理したり、逆に壊したりするガキ)
学校の帰道、大里家の農家の裏の草むらで中華鍋を風車の羽にした壊れた残骸を見つけ、
さっそく分解にとりかかろうとする純。
その姿を鏡でチカチカ照らす女。
「風車よ、風力発電の。父さんが以前作ったの」
とレイちゃんと純の出会い。しかし純、何も言わずに走って逃げる――。
コラ!幼稚園児かよ!相変わらず姑息感丸出しだなぁ~とツっこむ私。
しかしまあ、恋したってことですよね。純、初恋です。
二度目の出会いは帰り道、自転車のチェーンが外れて困ってるレイちゃん。
それを純が直してあげて、そのまま歩いてると雨が降ってきて、
例の小屋での雨宿りのシーンです。
「何やってんの早く脱いで」でドキドキして。
尾崎豊が好きだって話でちょっと盛り上がって。
進路の話になるわけです。
「進路どうするか決めた?私は東京の定時制高校通いながら、昼間は働いて、ダンスの勉強したいの」
それまではなんとなく地元の(富良野の)高校にそのまま進むつもりでいた純だけど、
俄然、東京に行く気満々になり、東京の雪子おばさんにこっそり連絡したり、草太兄ちゃんに相談したりし始め、東京の定時制高校に行く意思を固めていきます。
五郎には言えず・・・。
五郎に話せば無理してでもお金を工面してくれる事は分かっているから。
と、純なりの気遣いなんだけど・・・。
実は今回、僕にはこの話、初恋の話というよりは
思春期で親とのつながり、コミニケーションが薄れていく寂しさが胸に響きました。
子供にしてみれば巣立ちの時期で、自立し始める成長の時代なんですが
親からすると、子供が自分の手から離れていく寂しい時期でもあるんですね。
思い起こせば、私も中学生の頃、最も反抗期を迎えていたものです。
部屋には鍵をかけ、親が入ってきただけで、
「勝手にはいってくんじゃねえ!」と怒鳴る始末です。
黒板家も思春期を迎えた純と五郎の、すれちがいが、
冒頭からしっかりと描かれているわけです。
それぞれがいろんな思いは抱えているんだけど、子供の頃みたいにすぐに口に出せず、
言い出すタイミングも失い・・結局何も話せず。会話もなくなり・・・。
あと、純が東京の高校に進学を望んだ理由として、五郎の情けない姿を見たくないというのもあったようです。
実は大人たちの問題として、ちんた(純の同級生)の家の農家が水害でやられ、
700万の借金を地域みんなで分担して背負うかどうかという問題があり。
それを大里(レイちゃんの父親)が反対するんです。
「借金の保証人になるっていうのはただ判子押す事じゃない。五郎さん、あんた負担できるのか?」
と言われ、何も言い返せず。
家でベロベロに酔って、遊びに来たレイちゃんに向かってまた子供に八つ当たり。
五郎「昔から助け合うのが農家ってもんだ!もうお前なんか仲間じゃねえって、帰って親父に言っとけ!」
純「やめろよ!子供にはカンケーねーだろ!」
そりゃそうだ!さすがにここは私も純の味方。
これでもう純は五郎に完全にキレちゃって。
後で、冷静になっても、やっぱり最近の父さんは情けないというか、以前の、北海道に来たばかりの時の、気概、男のロマン、子供の顔色なんか無視してやりたいことをやり通すエゴパワー。そういうものが無くなって、ただのうだつの上がらない貧乏ジジイに成り下がって見え・・・。ここで固く東京行きを決意するようです。
───結局、純の進路希望の話を中ちゃん(地井武男)から聞いた五郎は(周りがみんな知ってるのに自分だけ知らなかったと)ショックを受け家に帰る。と、その日は五郎の誕生日で、電気がパッと明るく光り、純と蛍、草太兄ちゃんと新しい彼女アイコ(美保純)が集まり五郎の誕生日を祝う。純はかねてからこっそり風力発電の装置を作り、誕生日に五郎を驚かせようとしていた。
が、五郎は驚きも喜びもせず、進路の話をなぜ黙っていたのかと問い詰める。
そんな五郎に「父さん情けないよ!」と家を飛び出す純───
この場面、第三者の目で冷静に見ると、確かに五郎が大人げない。
自分だけ相談されなかったのは寂しいけど、それも自分の甲斐性の無さのせいでもあるわけだし、草太やアイコが集まって誕生日を祝ってくれてるわけですから、その話は後にして、とりあえずその場は盛りあがるフリでもするのが大人というもの。
それを直情的に取り乱して、詰め寄るなんてのは「情けない」と言われても仕方ないと
純寄りに味方して見ていたところ
そんな純を追いかけた草太兄ちゃんの言葉。
「純。お前の気持ちはわかる。でも、おじさんの気持ちもオラわかるぞ」
「男は見栄で生きてるもんだ」
「男は誰だって、いたわられれば傷つく」
「それが男ってもんだ」
ふだんはおしゃべりで、軽薄でウザい草太兄ちゃん。
要所要所でいい事言うんですよ。
北の国からの魅力は、なんといっても周りの大人たちの助言なんですよね。
――五郎の誕生日の日。初霜警報が出て。大里家の小豆畑が冷害にやられます。
その時の作業の事故でレイちゃんの母親が亡くなり・・・。
12月。しばらくぶりに会ったレイちゃんは意外に明るく、卒業したら札幌にいこう、
泊まりでなんて純にさらっと言ったりして・・・
クリスマスにまたあの雨宿りの納屋で会う約束をする。
が、大里家はクリスマスに夜逃げしていた。
レイちゃんと純もそのまま挨拶もなく・・・。
この場面はさすがに暗い。しかし、これが自然と生きるという現実。
ロマンだけじゃない田舎暮らしの現実をきちっと描いているわけです。
いないと思いながらも約束の納屋に行ってみる純。
と、置いてあるレイちゃんからの手紙とカセット入りウォークマン。
カチッと押すと流れ出す尾崎豊「アイラブユー」
そして迎えに来る蛍。
東京行きの手配を父さんがしてくれた事を告げる。
「もう遅いよ」と東京行きたい熱もすっかり冷めた純。
蛍「そういう事いまさら言わないでくれる!東京行きたかったのレイちゃんと一緒だから?」
ハイ。その通りなんですけどね・・。
今回、登場シーンあまりなかった蛍だけど、鋭いこと言うんだよな~。
純が家に帰ると五郎は言う。
「みんな黙って出ていく。ここはそういう土地だ。父さんも昔黙って出てった」
これ、前向きな諦観というのかな・・・。
大里家の夜逃げ、レイちゃんの母の事故。は確かに辛く悲しい現実だけど、
それは仕方ない運命と諦めて前を向こうという事。
それが数えきれない天災、人災に苦しめられてきた自然と共に生きる人たちのたどり着いた知恵なのではないか・・・なんて感じて。
「純、疲れたらいつでも帰ってこい。息が詰まったらいつでも帰ってこい。故郷に帰る事は恥ずかしい事じゃない。お前が帰る部屋はずっと空けとく。俺たちのことは心配しなくていい。卒業式が終わったらすぐ行け。雪子おばさん楽しみに待ってる」
「父さん・・・(もう東京へは行かなくていいんだ)」
と言いかけて飲み込む純。
そして卒業式での純のナレーション
「こっちに来て6年。母さん、東京へ行きます。父さんと蛍をこっちに残して、二人の事を考えるとたまりません。しかし将来のことを考えれば、どっかで父さんを捨てねばならず・・・」
と東京に行く覚悟を決めるのです。
この切り替えはなかなか立派です。
元々不純な動機で東京に行きたかっただけなのに・・・。
流れでなんか大げさなことになってしまって・・
そのまま中3で親を捨てる覚悟をするわけです。
そしてラストのトラックのシーン。
「開けてみろ。ピン札に泥がついてる。たぶんお前の父さんの手についた泥だろう。俺は受けとれん。お前の宝にしろ。一生とっとけ」
と強面のトラックの運ちゃん。古尾谷雅人でした。