「天空への回廊」笹本稜平 読書感想
雪崩に襲われた登山家の真木郷司は九死に一生を得るが、親友のフランス人が行方不明に。真木は親友の捜索を兼ねて衛星回収作戦に参加する。
ところが、そこには全世界を震撼させる、とんでもない秘密が隠されていた───
(光文社文庫カバー裏より)
この人工衛星のとんでもない秘密──
前半4分の1も読んでないあたりで、あっさり明かされます。
「えっ!いいの?」と思っているとまた新たな秘密が現れ、それがまたあっさり明かされ、また新たな謎が生まれる・・という具合に非常にテンポよく、読む手を休ませてくれません。結局最後まで一気読み。久しぶりに楽しいひと時を過ごしました。
しかし───
残念なのは世界を大きく広げすぎなところ
某ハリウッド映画「アル〇ゲ〇ン」を思い出してしまいました。
一人の登山家の手に世界の命運がかかっているとか
大統領との通信とか
せっかく山岳小説としてはとてもリアルに描かれているのに
冒険小説的部分が話広げすぎてかえってチンプな印象に・・・。
主人公の真木郷司の人物造形も深みがなく、(若い設定であえてかもしれませんが)
いちいちアメリカの体制に突っかかる感じは、どうも好きになれませんでした。
結局は、「怒涛の展開」だけに
力が注がれた作品のような気がします。後に残るものは何もない・・・
されど
読んでいる間の一時でも楽しい時間を過ごせる作品というのも、なかなか貴重です。
時間と金を返せと思う作品もごまんとありますから。
そういう意味でも本作は、極上のB級エンターテイメントとして
それなりに楽しめる作品だと思います。
あとは、みなさんが
人生観・価値観を変えるような新しい発想。
こんな人になりたいなあ、とマネしたくなるようなキャラクター。
心震える言葉や思い。
を見いだせればA級、S級作品になると思いますが。
そういうものが僕には見いだせなかったのでした。