「パンプキンシザーズ」TVアニメ感想
2006年放送アニメ 全24話
陸軍情報3課、戦災復興支援部隊 通称パンプキンシザーズの活躍を描いた話です。
戦争ものは数あれど、戦災復興をテーマに描いたものはなかなか他になく、
それだけでも十分に価値ある作品です。
───戦争は終わった。
だが、飢餓、疫病、行き場を失った軍人の夜盗化、混乱に乗じて私腹を肥やす貴族、などその爪痕は大きく、人為戦災という名のもう一つの戦争が続いていた。
そんな戦災の復興支援部隊として立ち上げられた情報3課。
実働部隊の隊長でこの話の主人公、アリスLマルヴィン少尉は、気高く、聡明で、眩しすぎるぐらいまっすぐな人物。
しかし、軍本部の狙いは、民衆の軍への不満をかわすためのパフォーマンス的な要素が大きく、その実態はわずか数人の軍の窓際族の吹き溜まり。その事は軍内外で周知の事で、「お祭り部隊」とか「お気楽3課」と揶揄されていた。しかし、アリスは一人3課の仕事に誇りを持って、愚直に戦災復興の任務に取り組んでいた。
はじめのうちは、単純な正論を振りかざして突き進んでいた感があるが、物語が進むうちに、単なる正義感を振りかざすだけでなく、ただ上から手を差し伸べるだけでなく、物資をばらまくだけでなく、真の復興とはどういうことか、という難しい問題に向き合っていくことになる。
復興問題の葛藤を正面から逃げず描いているのがこの作品の肝であり、そこがいいです。
特に9話、「朝霧の女」はみごとです。
女好きのオレルド准尉はナイトクラブで暗い目をした女が気にかかる。
なんとかこの子を笑わせようと、夜景のきれいな場所に連れて行ったり、バイクに載せたりするが、女はやはり心から笑わない。
彼女は戦死した男を待ち続ける女だった。
戦死の知らせが信じられず、毎朝約束の橋で彼の帰りを待ち続けている。
と、ここまではよくある話です。
こういう人間に、一体何が出来るのか・・。
思い悩み、オレルドは、軍の情報部資料室で彼女の彼がいた部隊の終期の実態を調べ、彼がどう戦ってどう死んだのか、詳しく話して聞かせる。
彼がどんな思いで戦ったのか知り、止まったままの彼女の気持ちを前へ進ませるために・・・、このあとオレルドと彼女がどうこうなるわけでもなく。
彼女は笑顔を取り戻し、オレルドはいつもの3課の日常に戻り、話は終わり。
ようするに、人の心の復興にどこまで踏み込めるか。
そもそも踏み込むべきか?そっとしておくべきか?
という事を描いているのだと思います。
この話をどう受け止めるか、賛否も分かれるところだろうけど。
私はオレルドのやり方、素敵だと思いました。
アニメのラストシーンには否定的な意見が多いようですが、
私はむしろこの終わり方で良いと思います。
原作漫画も読みましたが、話広げすぎて収拾つかなくなってる感あるので。
これは復興と救済と正義についての葛藤の話で、
舞踏会でのアリスは、一応のその答えを見つけるわけですから。
原作漫画もここで終わりにしてよいとさえ思います