「透明なゆりかご」ドラマ感想
放送 2018年7月 NHK総合 全10話
出演 清原果耶
久しぶりに日本のドラマをちゃんと観ましたよ。
特に医療ものや司法ものは海外ドラマが圧倒的にうまく、どうしてもそれと比較してしまうと見劣りする日本ドラマ。昨今は見向きもしませんでした。
「グレイズアナトミー」や「ER」なんかは医療現場の緊迫感を臨場感たっぷりにテンポよく描き、時に恋愛模様なんかもポップに入れ込みつつ、重いテーマをさらっと響かせてくる巧みさ。今見てもホント見事だなぁ~と感心します。
さて、本作は・・
1話2話ぐらいまではやっぱりテンポ悪いな・・・主人公のアオちゃん高校生?研修医ものとしては若すぎて青臭さが面倒臭いな・・とイマイチな印象でした。
が‼しかし‼3話以降はもうそんな些細な事どうでもよくなり、俄然引き込まれました。
‼以下若干ネタバレあり。観てない人はご注意ください‼
3話「不機嫌な妊婦」
一見クレーマー的な人をクレーマーと切り捨てず
「人が不機嫌になるには理由があるはず」と視点を変えたアオちゃん素晴らしかったです。そしてそれは田畑智子演じるさおりが背負っていた絶対的な暗闇にかすかな光を与える。
それはこの作品全体の核にもなっているのですね。
絶対的な暗部を描きながら、そのさらに裏側を真摯に見つめ光をつかもうとする視点というのかな・・。
それは4話「産科危機」で確かなものとなります。
母体死亡。安全な出産が当たり前と思われているけどそれは違う。
原田美枝子扮する婦長の重い言葉でした。
これはスーパードクターが奇跡を起こすようなドラマでは決してない。
重い現実をそのまま描き、しかし、人生は不条理だと投げ捨てるのでもなく、
そこからどう生きていくかという事を、愚直に、泥臭く、不器用に示していこうとしているドラマなんだと思いました。
6話「いつか望んだ時」
何度も中絶しようとする女の子。何も聞かずに格安で手術を請け負う怪しい医者。初めは「警察に連絡する!」と騒ぎ立てるアオちゃん。
しかし、彼らにもそれなりの事情や信念があり、一概に否定できるものではないとアオちゃんは気づくのでした。これもやっぱり影の部分のそのまた裏側を真摯に見つめようとするアオちゃんの視点が素晴らしかったですね。
ハルミを演じたモトーラ世理奈。次世代の安藤サクラ的な感じでよかったなぁ~。大女優になる予感ですね。
10話「7日間の命」
心臓に重大な欠陥があると分かっていて生む決断をし、さらには積極的治療をせず限られた時間を触れ合いながら共に過ごすと決めた夫婦。やはり奇跡は起きず7日で亡くなった赤ちゃんの前で、「この子の望みは何だったのか。本当はもっと長生きしたかったんじゃないか」と悔やむ母。そこに声をかけるアオちゃん。「小さな子供の望みなんて、お母さんに抱いてもらう事だけじゃないでしょうか」
僕もね、家族の延命措置、短時間に決断迫られて、延命措置はしないという決断を下した経験はありますが、その決断は正しかったか?本人の意思はどうだったのだのだろうか?何年にもわたり鬱々と堂々巡りしていたこと思い出しました。アオちゃんのようなこと言ってくれる人いたらなぁ~もっと早く立ち直れたかも‥なんて。
このドラマ。重いとか辛いとか悲しいとか。そういう感想も多いでしょう。
しかし、その重くつらい現実を真摯に見つめ、その先に微かな希望を見つけ、それでも生きていくんだ、というメッセージ・・というか優しい祈りのような思いが心にしみる素敵なドラマでした。
タイトルの「透明なゆりかご」とは何か?人それぞれ解釈があっていいと思いますけど、僕は「清らかで純粋な愛」というようなニュアンスで解釈しました。
アオちゃんの視点がね。純粋で清らかなんですよ。