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映画「訣別の街」感想~政治と人の絆とは~

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1996年アメリ

アルパチーノ/ジョンキューザック

 

後世に語り継ぎたい名作映画3

 

ニューヨーク・ブルックリンで警官とマフィアとの銃撃戦が発生した。警官とマフィアは相打ちとなり両者が死亡し、さらに流れ弾が当たった黒人少年も死亡した。市民から絶大な支持を得ているニューヨーク市長ジョン・パパス(アルパチーノ)は市長補佐官のケヴィン(キューザック)の反対を押し切って事件で死亡した少年の葬儀に参列し弔辞を述べた。

死亡したマフィアは保護観察中であったが、懲役刑ではなく保護観察処分が下された当時の経緯に不自然な点があることにケヴィンは気づく。ケヴィンは調査を進めるが、情報提供者が次々に殺害される。判決が意図的に軽減されていた証拠が揃い、関与が明白になった判事スターンにケヴィンは辞職を迫る。スターンは自身がマフィアに買収されたことを告白。そしてその買収にはジョンの盟友である政治家アンセルモが関与していること、さらに政界にはニューヨーク・マフィアの1人ポール・ザパティから裏金が流入していることも告白した。

 

政治家と判事とマフィアの癒着を、

若い市長補佐官ケヴィンが暴いていくという話です。

単純に、正義感あふれる若手補佐官が、悪徳政治家を成敗するという話にせず、

明白な善と悪の目線を持たず、人間のグレーな部分に一定の愛情をもって描かれている感じがいいです。

「一瞬で判断するな」

「冷たく裁くな」

「単純な善悪など無い」

「人生はタイルじゃない、モルタルだ」

・・・・・・・・

「判事には温情ある対処をたのむ」

スターン判事の不正の証拠をつかんだケヴィンが

辞職を迫りに出かける前、ジョンと対峙した時のセリフです。

 

ちょっと余談になりますが

日本の政治家たちもよく、どこかの講演会での演説のワンフレーズを切り取って、

ニュースやワイドショーなどで批判され、そのニュースをみただけであの政治家は悪だと決めつける感じ。人間そんな単純じゃないだろうと。

一瞬で、一部分で、単純に善悪を決めつける傾向はよくないなあと思ったりしたのです。

 

しかし、市長であるジョンの不正関与も明らかとなり、ケヴィンはジョンと対峙します。

そこでジョンは再三「メンシュカイト」という言葉を連発するのですが、

「メンシュカイト」とは・・・

「男と男の連携」

「そこにある何か」

「1000回電話し、褒められ、けなされ」

「握手で伝わる何か」

・・・・・・・・・・・・・・

「白と黒の間にあるグレーの領域」

「そこに生きるのが我々だ」

市長と判事と政治家とマフィア

若いころ純粋な友情で結ばれた男たちが、時を経て、

それぞれの責任ある立場となったのでしょう。

もちろん公私を混同すべきではありませんが、

人間そうはっきり分けられるものでもない、というのも一理あります。

いや、分けてしまえる人間よりも、

分けられない人間のほうが温かく見えることもあります。

政治家だからこそ、漠然とした公平よりも、一人一人との仁義を重んじると言えば、

むしろ正しい在り方にも思えます。

しかし、それは一歩間違えれば癒着になる。

気持ちは分からなくもないけど・・・

最後はグレーを肯定するのではなく、癒着は、不正。

間違っており、公人は公平でなければならない、と締めくくっています。

最後、ケヴィンが静かに引導を渡すシーンは心に響きました。

「残念です」                                                                     

「どうか引退を」

「引き際です」

田舎の政治好き青年だったケヴィン。

ジョンの演説に聞き惚れて感動しその事を伝えに行ったら

食事に招かれ、意気投合した。

その縁から、補佐官となり3年。

ジョンを心底尊敬し、補佐して守ろうと奔走した結果、不正を暴く事になってしまった。

そんな断腸の思いが心に響く名シーンでした。

 

もうひとつ言いたいのは、この作品

サスペンス要素が高いわりには、大きな波風をたてず、

静かに描いているところが一味違うんです。

平坦で眠くなると感じる人もいるでしょう。

賛否の分かれるところでもあると思います。

マフィアのボス、ポールザパティと政治家アンセルモの終盤のやり取りは特に印象的でした。

最後の引導を渡すシーンも

普通なら、ワーワーとまくし立てて問い詰めてもいい場面ですが

これ以上ない短い言葉で、静かに話したからこそ余計に

心に響いたのでしょう。

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