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映画「隠し剣 鬼の爪」感想~ズーズー弁が温かい。正直に生きるとは~

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公開 2004年

原作 藤沢周平

監督 山田洋次

出演 永瀬正敏 松たか子 小澤征悦

 

たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」と続く藤沢周平時代劇三部作の1つです。みんな似たような話、似たようなテーマで、どれが好きかというのは結局、出演している俳優さんの好みではないかという気もしますが・・・。

僕は断トツでこの「隠し剣 鬼の爪」が好きです。

永瀬正敏ズーズー弁がイイんです!!

永瀬正敏と言えばおしゃれでクールでニヒルなイメージが強かったのではないでしょうか?今でいう松田龍平的な感じ?同じような探偵ものやってたし・・・。

しかし僕はそのイメージの彼はどちらかというと嫌いな部類でした。

嫉妬半分もあって「ケッ!」っと思っていました。

本作ではファッションにまるで無頓着、東北のズーズー弁丸出しの、

しかし素朴でまっすぐで温かみのある田舎侍、片桐宗蔵を見事に演じています。

永瀬正敏やるじゃないか」とそれまでのイメージを180度見直しました。

奉公人のきえを演じた松たか子もまたイイんです!!

冒頭、きえ(松たか子)は明るく気立てのいい片桐家の奉公人でした。

しかし間もなく商家に嫁いでいきます。

3年後というテロップが出て、町の店先で偶然再会する宗蔵ときえ。

宗蔵「きえは、幸せだか?」

きえ「はい」

ここまで開始から約10分。早くも涙が・・

このシーン例えば、きえ役がりえちゃんだったら、もっとジットリした感じになっていたでしょうし、檀れいならさっぱりしすぎていたんじゃないでしょうか。

松たか子の絶妙な演技の「はい」なんですね、これが。

きえが、どうやら嫁ぎ先の商家でいじめられ病に伏せっていると聞いた宗蔵は

商家に乗り込み

「きえはどこだあ!案内せい!」

冒頭20分で2度目の涙が・・・

それまで穏やかで優しかった宗蔵が毅然とした強さを見せたイイシーンでした。

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この作品は片桐宗蔵ときえのラブストーリーがイイのですが

一歩間違えば、ジトジトしたメロドラマになるところ、永瀬正敏松たか子の絶妙な演技の兼ね合いでうまくすり抜けているのです。

批判的な意見としては、武士が商人の家に乗り込んで嫁をさらうなどあり得ない!

特に藤沢周平原作のファンからすると映画シリーズは全体的にファンタジック!

きえとのシーンがファンタジックなのにたいして、狭間(小澤征悦)とのシーンは冷静なのが矛盾している!

という声もあるようです。

小説も少々は読んだことあります。確かに救いようのないエグさやシュールさがあります。ただ、映画としてはこのぐらいでいいのではないでしょうか。

原作のシュールさが全く消えてるわけじゃないし。

きえに対しての行動と狭間にたいしての宗蔵の行動が、矛盾しているとも思いません。

冒頭で意気揚々と江戸に旅立っていった狭間は

幕末の尊王攘夷の気風に感化され謀反の罪人として帰ってきます。

しかし囚われていた牢を脱獄し旧友で剣術の同門である宗蔵に狭間討伐の命が下ります。

 

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私腹を肥やす家老堀を演じた緒方拳もさすがの悪役ぶりです。

そんな家老の命に従い、友を殺すバカバカしさ

そう思いながら藩命とあらば従うのが侍としての本分という信念。

宗蔵は、その自分の信念に従って狭間との決闘に挑んだのだと思います。

最期に侍を辞めてきえの家に向かった宗蔵の行動になんの矛盾もないのです。

変わりゆく時代の流れと旧体制の間で揺れる幕末の侍の葛藤もしっかりと描かれているし、確かにまっすぐな行動をする宗蔵ではあるけど、それはけっして若さからくる青臭さではなく、ある程度人生の機微を、むなしさを知った上で、あえてまっすぐに生きようとする姿であり、そこには原作のシュールさもきちんとあって、決してファンタジックな、ただのメロドラマではないと思います。

そんなストーリーうんぬんというよりも、

とにかく永瀬正敏演じる宗蔵の素朴でまっすぐな言葉と行動が心に響きました。

素直に思ったことを口にし、行動する生き方も悪くないなあと思わされたのでした。

 

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