「ニューシネマパラダイス」映画感想
公開 1989年 伊・仏
完全オリジナル版(約3時間)と短縮版(約2時間)があるようですが
僕は完全オリジナル版を観ました。
そのせいか、前半はやや間延びした印象でしたが
中盤あたりからぐんぐん引き込まれて、この作品もラストがとても印象的でした。
あの、ラストシーンに何を思うか?
10人いたら10通りの感じ方があるのではないかと思います。
同じ人間でも時間を空けて見直すごとに見方がかわるだろうな~というような
一言では言い表せない奥深い余韻が残りました。
!!!以下ネタバレ含みます!!!
ストーリーをざっくり説明しますと
シチリア島出身の映画監督の半生を幼少期、青年期、中年期と3部構成で描いた話です。
幼少期
シチリア島の小さな村にある映画館・パラダイス座。親の目を盗んではここに通いつめる少年トトは、大の映画好き。やがて映写技師の老人アルフレードと心を通わせるようになり、ますます映画に魅せられていく。
青年期
ある事故によって引退したアルフレードに代わり映写技師となったトト。同じ学校のエレナと恋に落ちる。しかしエレナの親からは反対され、別の婚約者を立てられてしまう。トトも徴兵されることになり、出兵前に映画館の前で会う約束をするが、エレナは来ない。兵舎から何度も電話を掛けるが連絡はつかず、1年の兵役を終え帰ると、エレナは行方知れずに。途方に暮れるトトにアルフレードは「ローマに行け、そしてこの村には帰ってくるな」という。戦争で父親を失ったトトにとって、アルフレードは親代わりのような存在になっていた。
中年期
ローマで映画監督として活躍するようになったトトのもとにアルフレードの訃報が。映画に夢中だった少年時代を懐古しつつ、30年ぶりにトトはシチリアに帰ってきた。
そしてエレナとの再会を果たす。エレナは結婚して幸せな家庭を築き、2人の子供がいる。実は30年前エレナは映画館に来ていたことがわかる。アルフレードに伝言を残したことも・・。アルフレードはそのことをトトにあえて言わなかったのだ。
しれっとエレナは来なかったと嘘をつき、トトをローマに送り出したこと。
このアルフレードのしたことをどう見るか?
アルフレードは、自分の果たせなかった夢をトトに託してしまったのか?
若い時の恋など時がたてばいい思い出として風化するものと思ったのか?
「普通の幸せ」なんて豊かな社会の現代だから言えることで
あの時代背景ではありえないとアルフレードは自らの体験から感じていたのか?
映写技師なんて職業に未来がないことも分かっていたし、シチリアにいても未来はないと思ったのか?
あのアルフレードの嘘には100%愛しかなかった、という事は分かります。
アルフレードの目には、ローマに行ったトトが、映画業界で成功し、
エレナの事も青春のいい思い出として心の奥にしまい、新たな恋をして
幸せな家庭を築き、人生を謳歌する姿しか見えていなかったのでしょう。
優しいウソなのは分かります。
しかし、幸せって何でしょう?アルフレード。
実際トトも仕事では成功しましたが、私生活では結婚はせず、不毛な恋愛を繰り返しながら、30年ずっとエレナの事を引きずっていたようです。
エレナと結ばれなかったのがすべてアルフレードのせいとは言いません。
もともと、反対されていた恋だし、アルフレードの嘘がなくても結ばれていた可能性は極めて低いでしょう。
エレナと結ばれていたら映画監督にはなれなかったでしょう。
タラレバを言い出せばいろんな可能性があったでしょうし、何が幸せだったのかもわかりませんが・・。
これ公開時タイムリーに観てたら完全に
「ふざけんなアルフレード!結果はどうあれ、お前の価値観で人の人生をねじまげるなよ!」と思ったことでしょう。
しかし今の僕の感想は
「これが人生だよな」です
今だ、アルフレードの嘘は快くは受け入れがたいです。
若いころは、自分の人生は自分で決めなきゃ気が済まないと思ってたし、自分ひとりで生きている気になっていました。その感じは今だ抜けきってはいませんが
今はすべて自分の思いどうりにはいかないのが人生だと思います。
別に虚無的な感傷に浸っているわけではなく、悟りぶってるわけでもなく。
前向きに、
人はいろんな偶然や人の思いが交差する中で生かされているのかな・・・
とも思う今日この頃で。
アルフレードの嘘は快くは受け入れがたいけど、苦笑いで許せるぐらいのニュアンスで
「やってくれたな・・アルフレード」
「でも、あんたと過ごした日々は一点の曇りもなく幸せだったよ」
ラストシーン、あのフィルムを観ながらトトはそんなことを思っているように
僕は感じました。
また数年後に見たら変わるんだろうな~と思いつつ。