「風の電話」映画感想
製作 2020年
監督 諏訪敦彦
出演 モトーラ世里奈
2011年の東日本大震災で家族全員をいっぺんに失ってしまった少女の話。
主人公ハルを演じるモトーラ世里奈の存在感。すごいな。
もう笑っちゃうほどすごいよ。一切コメディ要素の無いシリアスな内容なんだけど・・・もう、笑うしかないという感じ。
感動するとか、泣くとか、お涙頂戴とかそういうものでもない。
ほとんどセリフもない表情と佇まいの長回しで進行していくんだけど
並の俳優だったらこんなの観れたもんじゃないだろうけど・・・。
のっけから心壊れてまくってる感じ。
いつ折れるか分からない小枝のような佇まい。
次の瞬間、何しでかすか・・・一瞬たりとも目が離せない危うさ。儚さ。
モトーラの独壇場。
開始10分で彼女の雰囲気になじめない人は早めに諦めた方がイイかも。
あることを機に、身を寄せていた広島から故郷の岩手県大槌町へ・・・。
三浦友和。山本未来。西島秀俊。西田敏行。いろいろ出てくるけど。
そんなのはどうでもいい。どうってこともない。誰もどうすることもできない。
結局、家族全員いっぺんに失った人にかけられる言葉はない。
そこを誠実に描いている気がする。
しかし、人の温かさに触れ、それぞれが背負っている傷に触れ。
光が少しづづ見えはじめたのか、見えてないのか・・・。
最後の電話のシーンもすばらしい。
よくある幽霊とか幻とか登場させて死者と会話するなんて
ファンタジックな演出じゃなくてよかった。
同じこと言ったな・・・。
「早かれ遅かれ必ず行くから。楽しみに待っててね。俺も、それまで、精いっぱい生きるよ。」
完全に独り言。でもそこにいるんだよ。