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「キリングフィールド」映画感想

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製作 1985年 英

監督 ローランド・ジョフィ

出演 ジョン・ウォーターストーン

   ハイン・S・ニョール

   ジョン・マルコビッチ

 

冒頭5分。

主人公の新聞記者の言動で、ちょっと否定的な見方になってしまいました。

「どこに行こうと僕の自由だ!」

「法で認められている」

「妨害は違法行為だ」

「あんたの一言一句を記事に載せるよ」

マスコミの、言論の自由を盾に、自分の正義を疑わない姿・・。

最近のコロナ渦でマスコミや芸能人たちの「正義の言葉」に辟易していて

タイミングも悪かったのかもしれないけど・・。

鼻について仕方なかった。

他の記者やカメラマンたちも、やみくもにバシャバシャ写真を撮っているだけで、何の情報も、戦略も無く・・。

ありのままの状況を伝えるという使命感なのかもしれないけど・・

ありのままの事実を伝える。といっても、どこをどう切り取って編集するかで

そこに必ず発信者の意図や思想が表れるわけですから。

そういうバイアスが入るのはイイんですよ。ただそれを普遍の正義だとか真実だとか真理だと思ってるのは違うと言いたいのです。

 

カンボジア内紛の話です。

元々王国だったカンボジア北ベトナムよりだった事からアメリカが軍事介入してロン・ノル軍事政権を作った。

カンボジアからすればこれは侵略行為で、このロン・ノル政権打倒しアメリカを追い出すのに一役を担ったポル・ポト派KRは時のヒーローとなり人心を掌握。

その人気を利用し独裁者となってゆく。そして新政権のふたを開けてみると、ポルポトはとんでもない思想の持ち主で・・・。

毛沢東に心酔し極端な共産主義から反知性主義へ傾倒していく。

教育、病院、宗教の否定。幼児回帰。

そのイデオロギー、思想は分からなくもないが、極端に心酔して他の考えを一切認めない。認めないだけでなく殺していいと、大量虐殺。

眼鏡かけてるだけで殺す?それは酷い・・。

さらにはKR内部でもさまざまな派閥に分かれ、恐怖政治と疑心暗鬼の中で

仲間内でも殺し合い、狂気とカオスのキリングフィールドと化するカンボジア

国内の中の自国民同士の身内の争いに内政干渉できないと世界は目と耳を閉ざした・・。

それを命懸けで伝え、ピューリッツァー賞を受賞したNYタイムズの記者ジャンバーグとそのパートナーである現地カンボジア人ガイド、プラン。

その戦いと2人の絆を中心に描いた実話。

です。

 

冷静に考えれば、彼らのような記者たちがいたから、今私たちは家にいながらググってその歴史事実をある程度知ることができるわけですし、命懸けで戦場を状態を伝えようとした人たちを、鼻につくなどと非難するのも恥ずかしい話ですが・・。

あくまで映画に対しての率直な感想としてお許しください。

ただ・・・。

ヒトラー毛沢東ポルポトなど悪の権化を。

単なる突然変異的な狂人の悪と描くか。

我々、普通(と思っている)の人間の中にも潜在的に巣食っていて、

ある追い詰められた条件下では誰からも顔を出す危険を秘めている悪と描くのか。あるいはまた別の問題提起を残すのか。

同じ戦争の実話を描いた話でも、先の報道の話でも書いたように、どこを切り取り、どう編集するかで、その製作者の意図が表現されるもので・・

そこを読み解き、戦争は何なのか、誰もが悪とわかってるのに、

なぜ繰り返されるのか・・・

それを考えるのが面白く、そこが大事だと思うのです。

本作はその点では、戦争とは何か?ジャーナリズムとは?虐殺者の心理とは?

しっかりと考えさせられ、素晴らしい映画でした。

考えさせられても、そう、うまく結論は出ないのですがね・・。

そして、欲を言えば、主人公のジャンバーグの言動に感情移入できなかったのと

ラストの描き方が男の友情と絆の話で終わったところが僕の好みからすると

やや減点ポイントでした。

 

2020・6・1

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