takeの感想文マガジン

映画・ドラマ・アニメ・読書・の感想・レビューを綴るブログです

小説

小川洋子「人質の朗読会」

初版 2014年2月 中公文庫 あらすじ 遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた―慎み深い拍手で始まる朗読会。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは、人質たちと見張り役の犯人、そして…。人生のささやかな一場面が鮮やかに甦る。それは絶望ではなく、今日…

小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」読書感想

初版 2011年7月 文春文庫 少年がデパートの屋上に取り残された象に心を寄せるところから始まります。 その象インディラは、子象の時に屋上遊園地に見世物として運び込まれ、大きくなったら屋上から降ろせなくなって、そのまま屋上で孤独に生涯を閉じました。…

退廃って何でしょう? 小池真理子「恋」読書感想

初版 2002年12月 新潮文庫 あらすじ 1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で、一人の女が引き起こした発砲事件。当時学生だった布美子は、大学助教授・片瀬と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。が、一人の青年の出現に…

成長とは何かを考えさせられた小説、桜庭一樹「荒野」

初版 2017年5月 文春文庫 あらすじ 鎌倉で小説家の父と暮らす少女・荒野。「好き」ってどういうことか、まだよくわからない。でも中学入学の日、電車内で見知らぬ少年に窮地を救われたことをきっかけに、彼女に変化が起き始める。少女から大人へ―荒野の4年間…

「ガラスの海を渡る舟」寺地はるな 読書感想

初版 2021年9月 PHP研究所 あらすじ 大阪の心斎橋からほど近いエリアにある「空堀商店街」。そこには、兄妹二人が営むガラス工房があった。兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感した…

「晴天の迷いクジラ」窪美澄 読書感想

初版 2014年7月 新潮文庫 あらすじ デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正…

「滅びの前のシャングリラ」 凪良ゆう 読書感想

初版 2020年10月 中央公論社 あらすじ 「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。…

「冬のひまわり」五木寛之 読書感想

初版 1988年8月 新潮文庫 あらすじ 山科の旧家の娘遠野麻子は短大をでたあと、24歳で平凡な小学校教師と結婚した。 それから6年目の夏、彼女は鈴鹿サーキットで、イタリアから帰国したばかりの昔の恋人森谷透と劇的な再開をした。以後、麻子と透は年に1度、…

「哀しみの女」五木寛之 読書感想

初版 1989年8月 新潮文庫 あらすじ 年下の画家・章司と暮らす和実は、たまたま見かけた異端の天才画家エゴン・シーレの作品「哀しみの女」に、自分の未来の姿を予感する。そして、彼女は、モデルであり画家の愛人でもあった女の薄幸な人生に、自分の運命を重…

「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子 読書感想

初版 2014年10月 講談社文庫 あらすじ 入江冬子(フユコ)、34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに…

「流」東山彰良 読書感想

あらすじ 1975年、台北。偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。なぜ?誰が? 無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。台湾から日本、そしてすべての答えが…

「砂上」桜木紫乃 読書感想 ~理解と共感の狭間で~

初版 2020年7月 角川文庫 主人公は40歳独身女、柊令央。ビストロでバイトしながら小説書いている。 離婚した元夫からの慰謝料を頼りに生活しているが、最近は滞りがち。 向こうも生活が厳しいと金額の値引きを打診されたり・・・。 直近、母が死んだらしいが…

「六月の雪」乃南アサ 読書感想

初版 2021年5月 文春文庫 あらすじ 30代前半、独身の杉山未來は、声優になるという夢に破れ、父母、妹、弟と離れ、 祖母・朋子と東京でおだやかな二人暮らし。 ある日、祖母の骨折・入院を機に、未來は祖母が台湾うまれであることを知る。 彼女を元気づける…

「わたしの美しい庭」 凪良ゆう 読書感想

初版 2019年 12月 ポプラ社 あらすじ 小学生の百音と統理はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。 百音と統理は血がつながっていない。その生活を“変わっている”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしてい…

「始まりの木」夏川草介 読書感想

初版 2020年9月 小学館 『神様のカルテ』著者、新たなステージへ! 「少しばかり不思議な話を書きました。 木と森と、空と大地と、ヒトの心の物語です」 --夏川草介 第一話 寄り道【主な舞台 青森県弘前市、嶽温泉、岩木山】 第二話 七色【主な舞台 京都府…

「たゆたえども沈まず」原田マハ 読書感想

初版 2020年4月 幻冬舎文庫 19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが“…

「流浪の月」凪良ゆう 読書感想

初版 2019年8月 東京創元社 あらすじ 小学生の家内更紗(かないさらさ)は大好きな両親と平和に暮らしていた。 自由奔放な母と寛容な父。(ちょっとジョンとヨーコを思いだす) 近所の人や学校の友達からはヤバイ家族と噂されていたけど。 更紗自身も常識や…

「機関車先生」伊集院静 読書感想

初版 1997年 講談社文庫 あらすじ 新しい先生は、口をきかんのじゃ…。舞台は戦争の傷跡の残る昭和三十年代、瀬戸内の葉名島。この小さな島の、生徒わずか七人の小学校に、北海道から代用教員がやってきた。口がきけないことと体が大きい事をかけて「機関車先…

「ジョーカー」 藤堂志津子 読書感想

初版 2003年6月 講談社文庫(角川文庫1993年の再販) なぜ今更こんなのを読む気になったのか・・・。 藤堂さんは青春時代にはまった作家さんの一人。 誰しも青春時代は輝いて思えるのではないか。 遠く離れれば離れるほどに 実際は鬱屈したものもたくさん背…

「老人と海」アーネスト・ヘミングウェイ 読書感想

初版 1966年6月 新潮文庫 (原作出版1952年) あらすじ キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメ…

「サラバ」上・中・下巻 西加奈子 読書感想

初版 2017年10月 小学館文庫 いや~時間かかった。長かった。 上・中・下・文庫3巻。 長い長い、家族の話。 僕と真逆の性格の主人公に全く共感できず、 終始イライラ、読むのも何度も挫折しかかり中断し・・・ 何とか意地で読み進めた・・・。 この作家はこ…

「戒厳令の夜 上・下」 五木寛之 読書感想

初版 1980年 3月 新潮文庫 あらすじ 元美術史学徒で今は二流の映画ライターをやっている主人公の江間。 とある映画祭の取材の帰りに、ふらりと訪れた福岡の酒場で そんなところにあるはずもない幻の名画を発見する。 福岡に在住する元右翼の重鎮で美術コレク…

「赤い靴が悲しい」片岡義男 読書感想

初版 平成元年10月 祥伝社文庫 高校生の頃、みんなが赤川次郎をまわし読みしたりしてた時、 僕は一人で片岡義男を読んでいた。 まあ、どちらも今思えばラノベ的で、(いい意味で)軽薄で、 おおよそ文学賞とは無縁な、心の闇とかドロドロした人の業 などほと…

「アイ」西加奈子 読書感想

初版 2019年11月 ポプラ文庫 最近書店でよく見かけて、気になっていた作家さん。 はじめて読みました。 記念すべき第1冊目です。 この物語の主人公はワイルド増田アイ。 アイはシリアで生まれた。 本当の両親は知らぬまま、赤ん坊の時、アメリカ人の父と日本…

「リーチ先生」原田マハ 読書感想

集英社文庫 初版 2019年6月 好いものは好い。 そう感じる私たち日本人の心には、きっと“リーチ先生”がいる。 日本を愛し日本に愛されたイギリス人陶芸家の美と友情に満ち溢れた生涯を描く感動のアート小説。 第36回新田次郎文学賞受賞作 若きイギリス人芸術…

「星の子」今村夏子 読書感想

初版 2019年12月 朝日文庫 初めて読む作家さんです。 芥川賞受賞作家さんという事は知らず ふらっと入った書店で背表紙のあらすじに惹かれて 衝動買いでした。 そのあらすじとは 主人公・林ちひろは中学3年生。 出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心…

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸 読書感想 

初版 2019年 4月 幻冬舎文庫 あらすじ 近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。かつて天才少女としてデビューもしながら母の突然の死去以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。楽器店勤務のサラ…

「キネマの神様」原田マハ 読書感想

初版 2011年5月 文春文庫 あらすじ 39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、しかも多額の借金が発覚した。 ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父…

「大岩壁」笹本稜平 読書感想

初版 2019年5月 文春文庫 あらすじ 「魔の山」、ナンガ・パルバット。この山は別格だ。ヒマラヤ、8000メートル級の山のなかで、多くの犠牲者を出し、通称「人食い山」の異名で恐れられてきた。立原祐二、48歳。5年前に、3名のパーティで登攀に挑むも、頂上目…

「その峰の彼方」  笹本稜平 読書感想

───人はなぜ山に登るのか という問いに正面から愚直に挑んだ山岳小説だと思います。 主人公の津田悟は冬のマッキンリーの難ルート単独登攀をして、遭難。 友人の吉沢と地元山岳ガイドたちによる捜索行を通して、 津田はなぜ危険な単独行に挑んだのか?安否は…

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