takeの感想文マガジン

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愛なんていらねえよ、夏

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渡部篤郎広末涼子藤原竜也

脚本/龍居由佳里 

2002年

 

どんな巨匠でも、名俳優でも、その最全盛期というのは短いものです。

本当に脂ののりきった全盛期の代表作は1作品かせいぜい2作品あるかないか、

ではないでしょうか。

このドラマは主演の渡部篤郎、脚本家、龍居由佳里の最も全盛期の

代表作だと、僕は思います。

二人の最全盛期が重なった、それはもう、神がかり的な作品です。

僕の好きな国内ドラマランキング2位。

1位の「北の国から」と共に国内ドラマの双壁として後世に語り継ぎたい名作です。

 

───歌舞伎町のホスト白鳥レイジ(渡部)は7億の借金を背負う。そんな中、死んだ弟分、鷹園礼慈の妹、鷹園亜子(広末)が大企業の社長の娘で巨額の遺産を相続したと知る。礼慈と亜子は幼い頃(15年前)両親の離婚により離れ離れになったきり一度も会っていなかったという話を思い出し、レイジは鷹園礼慈になりすまし(亜子の兄になりすまし)亜子の受け取った遺産を奪おうと画策。鎌倉にある鷹園家に弟分の奈留(藤原)を引き連れ乗り込む。15年会っていないとはいえ礼慈とレイジは似ても似つかないし、年齢もレイジのほうがだいぶ上。にもかかわらず、ろくな計画も無いレイジに奈留は心配するが、亜子は盲目であった事も功を奏し、意外にあっさりと兄と信じ込ませることに成功。始めのうちは固く心を閉ざしていた亜子だが、しだいにレイジに心を許し始める。計画は順調に進んでいたかに見えたが、レイジの心の奥に深く眠っていた、ある感情がよみがえり始め、少しづつ歯車が狂いだすのだった───

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このドラマ、なにがイイかって、一言で表すなら感情表現がすごいんです。

嘘をつくのが仕事のようなホストと、心を閉ざした盲目の少女という難しい役どころの主人公にもかかわらず、その心情の揺れが手に取るように伝わってくるんです。

ナレーションで説明する事も無く、狂言回し的な脇役に解説させるわけでも無く、ダイレクトにセリフ(言葉)で伝える事でも無く、役者の表情や、声質、脚本の構成、演出、などを駆使して巧みに伝えてくるんです。

特に、盲目の亜子は相手の表情が見えないため、声質に敏感で、ちょっとした声のトーンでその人の言葉の正誤を計るという造形は面白く、出演者全員が声質というものに神経をそそいで演技しているように感じました。その事で、嘘と実を入り交えた複雑なキャラクターが多いにもかかわらず、主演の二人はもちろん、脇役陣もすべて、微妙な感情の揺れが、見事に心に迫って伝わってくるんです。ほとんどの登場人物が、生きた人間として、感情豊かに作中を闊歩しているんです。

こういうドラマ、意外と無いですよ。

泣いて、わめいて「愛してる」だ「好きだ」と叫んでも、さっぱり感情が心に迫ってこないドラマはたくさんありますけど・・・。

 

 

亜子「やっぱり私たち、住んでる世界が違うんですね」

レイジ「───まあ、いいじゃない。こうして出会えたんだから」

 

 

最終回。

頭の手術を控えた亜子をレイジが強引に連れ出して行った、海辺のホテルにて。

幸せゲームと称しホストと常連客のフリして、ホストクラブごっこを始めるシーン。

嘘の芝居をしているシーンなのに、

なぜかレイジの本音が一番伝わった名場面でした。

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