「北の国から95秘密」ドラマ感想
~~完全ネタバレ~~
石の家、完成しました。五郎はアキナ(ワンコ)と暮らしてます。
夢の足の伸ばせる風呂に入って、家庭菜園のような小さな畑で自分で食べる野菜だけ作って、
電気水道ガスは無い、質素なスローライフ満喫しているようです。
純は富良野の市街地にアパート借りて、正吉と2人暮らし。
市の公務員となりゴミ回収業をやってます。
レイちゃんとは一応付き合ってるようで、札幌と富良野で中距離恋愛して、
月に一回ぐらい会っているようです。
今回も、レイちゃんが富良野にやってきて久々のデート。
しかし「プロポーズされちゃった。大人の、ビジネスマンに」と言われ
「へえ、よかったじゃねえか」と言ったきり、明らかに不機嫌モードになる純。
そもそも、最近のデートはずっとこんな感じで、会っても会話は弾まずギクシャクしているそうです。あの「思いでの小屋」がある八幡丘を一緒に歩き。
突然、草むらで荒々しく押し倒す純。「嫌ヤメテ!」と拒絶され。
「結婚すれば。その大人と」「本気でそう言ってるの」「ああ、そいつのほうがふさわしいと思うよ」
――変わらんな~こいつは。毎回、ラストには成長したかに見えるんだけど。
結局、人間本質はそう簡単に変わらないということ、描いてるのかな・・。
しかし、レイちゃんとは付き合ってないのか?プロポーズされたってことは?
肉体関係のない微妙な関係だったのかな?
札幌の街でどんどん洗練された大人の女性になっていくレイちゃん。一方、純は東京を卒業して田舎への回帰。しかしコップレックスは残っててコロン大量に吹きかけてたり。
どこかすれ違ってたのでしょう。
そんな時に出会ったのが小沼シュウ(宮沢りえ)。
シュウが間違って粗大ごみ置き場に捨てちゃったおじいさんの柱時計。純が拾って使ってて。一度は焼却したことにしてたのを、シュウの顔見て鼻伸ばした純が返したのがキッカケ。
シュウはもう大喜びで、始めっから純に好意的で、いきなり初対面で聞いてもいないのに電話番号教えてくれたり「うちに寄ってかない?」なんて言い出す天真爛漫なキャラ。
「カンチ!」言う赤名リカ(鈴木保奈美)思い出しちゃったよ。
しかしなんだろうな~天真爛漫なんだけど、どこかねっとりしてるというか、湿っぽいというか、以前はこの宮沢りえの演技嫌いだったんだけど・・
この後に語られるシュウの過去のことを知ったうえで観ると、これはこれでいいんだな。
りえちゃんのプライベートでの過去とも重なって、無理して精いっぱい天真爛漫に振舞ってる感じが痛々しいんだけど・・・。
結局、純は一度は家に寄ってくの断ったんだけど、アパートに帰ると同居人の正吉が彼女連れ込んでて、邪魔するな!合図の黄色いハンカチが出てて、シュウに電話して、またすぐに再会して。
この後、付き合い始めたのか?デート重ねる様子がダイジェストで流れ。
五郎の家に二人で行くと、シュウと五郎はすっかり意気投合。
「電気がないってことはテレビもないの?」「無い」「じゃあ世の中のことはどうやって知るの?」「みんなよく知る権利っていうけど。おいらはその逆。しらん権利。余計な事知らん方が楽なのよ~」「アハハ最高!シビレちゃった~もうお父さん最高!」
その日の帰り送っていった純。「ちょっと寄ってかない?何にもないけど」言われ
シュウのアパートに上がり込むことになり・・・。
と、ホントになんにもないボロアパート。
シュウはこれから少しづつ家具を揃えていくんだ、とそのレイアウトをキラキラした目で語る。
でもお金ないしな~なんていうと。純得意げに「中古でもイイか?」「え~いくらぐらい?」「タダ」「タダ?」「そう、ほら俺たちの職場の裏にある粗大ごみのゴミ捨て場、
俺の部屋もそこで拾ったもんでダイタイ間に合わせちゃってるんだ。山部山麓デパートって呼んでるんだ。いつでも好きな時にご案内しますよ」
と!いきなりシュウに抱き着かれて、押し倒されて「好き」とキスされて・・。
純、そのまま朝帰り。
――なんじゃこりゃ~。ゴミ捨て場の家具で大喜びする女。さすがにいないだろ~。
しかし、過去のことを知ったうえで観れば、この何もないボロアパートでゼロからの再出発。
シュウが抱えている心の傷。珍しく気取らず素直にゴミの話しをした純。
これも一つの縁ですな・・・。
この後、札幌の勇ちゃん(緒形直人)から連絡があり
蛍が札幌の大学病院の先生と不倫したあげく、病院を辞めどこかに駆け落ちしていることを知らされます。
さらに、友達のヒロスケによってシュウが昔、東京でAVに出演していた事が発覚します。
そこで草太兄ちゃんの言葉
「お前が知ってる事を、相手は知らん。自分の過去を知らんと思ってる。ずーっとそう思わせろ。知らんぷりを通せ。その事を話したり。ほのめかしたり、責めたり。絶対にしたらいかん。惚れてるならそうしろ。それがやさしさつーもんだ」
しかし、純はそれが出来ず、あからさまに不機嫌な態度を見せ、
ネチネチと遠回しに、シュウの口からその事を言わせようとするんです。
「隠し事は好きじゃない、隠されるとかえって気になるからな」
「何を隠してるっていうの」
「隠してないならそれでいいよ」
そうして、また二人の関係はギクシャクし始めます。
――まったくもう。なんでこんな純がモテるのか、意味わかんないなぁ~
その頃、静かに、五郎さんの家にやってくる大竹しのぶ(蛍の不倫相手の妻)
安いドラマなら眉毛つり上げながら乗り込んできて、
髪の毛でもつかみかかりながら、ワーワーとまくし立てるような役どころですよ。
大竹しのぶは静かに、ほんとに静かに礼儀正しくやってきて。
蛍の大学病院の婦長とだけ名乗り、蛍の住所を聞き出します。
年賀状が届いていて、駆け落ち先の住所が書いてあるのを、
五郎さんは喜んで差し出します。
その後に、「黒木です、黒木の妻です」と名乗りますが五郎さんは
「いや~お世話になって」
とまったく事情を知らない様子。
「責めるつもりで来たんじゃないんですよ」
といいながら、大竹しのぶは静かに淡々と事情を説明します。
本当に一切責め立てたりはしません。
それどころか 「たぶん主人が悪いんでしょう」と、ショックを受ける五郎をいたわります。
そして、「お邪魔しました、帰ります」と、静かに帰ります。
バス停まで送って行った五郎さんに
「お願いがあります。ここから蛍ちゃんに電話してください。それで主人に代わってもらってくれませんか」
と、突然、切羽詰まった様子で言いだします。
そんな様子に気おされた五郎さんは有無を言えず電話をかけます。
携帯はまだない時代ですから。公衆電話からです。
蛍が「もしもし」と出ると、横から手を出して慌てて電話を切り
「バカねえ、私ったら。なにしてんのかしら」
――したたかさ、強さ、その裏にじみ出る悔しさ、不安、寂しさ、悲しみ・・・。
短いシーンの中で、揺れる複雑な心理が心に響く深い演技でした。
大竹しのぶ来訪によって蛍の不倫と駆け落ちの事情を知った五郎さんは、
純と一緒に根室にいる蛍に会いに行きます。
とにかく会いに来たはいいけど、なんて言えばいいのか・・
「オイラよう会えん」と純に様子見に行かせて、自分は一人食堂で酒を煽る・・・。
しかしまあそんな事蛍はお見通しで「父さん来てるんでしょ」
結局蛍と会う五郎さん
「もうなんでもいいよ。誰に迷惑かけようが、自分に正直に・・」
「いいとか悪いとかじゃなくて・・世間的にはよくない事かもしれないけど・・」
「父さんに対して、申し訳ないなんて、思うな」
「お前が何しようと、おらぁ、お前の味方だ」
「だから、余計な事考えないで・・しちまった事、後悔せんでよう」
僕は、ただ優しいだけの五郎さんにはやや否定的でしたが、
この時の五郎さんの言葉には胸を打たれました。
わかっちゃいるけど、どうしようもない、蛍の気持ちを察して、
余計な小言はみじんも言わないと、瞬時に腹を決めて発した言葉だったのでしょう。
こういう機微は、まだまだ純よりもずっと大人ですね。
昔、子供の頃の純に、時に殺伐とした気骨を持って接した五郎さん。
最近ではすっかりその影は潜め、優しいけれど、どこか弱々しく、小さく見えていた五郎さん。いやいや、なんの、懐深く大きな五郎さんが、そこにいました。
帰り際、新巻鮭を買って蛍に持たせ五郎さん。
去っていく蛍の背中に
「蛍~いつでも富良野に帰ってくるんだぞ~」
蛍は、関を切った様に涙があふれ出し、駆け戻ってきて
「私だって、本当は、毎日自分を責めてるの。でもどうしようもないの」
「ごめんなさい」
――この時の蛍の演技も泣けたな~。
それまで口を一文字に固く閉じ、世の中すべてを敵に回して戦っていたかのような蛍。
あの可愛かった蛍が、どうしてこんな女になっちゃったのかと、悲観的に見ていた人も少なくないでしょう。しかし、僕の目には、蛍は、昔からこういう女でした。
母さん(いしだあゆみ)が富良野に来て、帰る時、正面から見送りに行かなかった蛍。
悲しい時、辛い時ほど、毅然とした、凛とした態度で背を向ける。
そんな蛍は、本当は、やさしくて、情が深くて、弱いんです。
この後、富良野に帰った五郎さんの家にシュウが一人で遊びに来ます。
「水が氷っちまった。風呂に入れん」から「温泉行かない。天然の露天風呂」「よし行くべ」
と2人で温泉に行きます。脱衣場もないような秘湯の混浴。ワイルド~とか言いながらそそくさと脱いで入るシュウ。五郎も後から続いて入り。
ひとしおはしゃいで、ふと寂しげになるシュウ。
「純君ともうダメかもしれない」
「どうしてダメなんだ。何があったんだ。どうしてもダメなのか・・・」
「昔のことがね、引っかかってるみたい。私の、人に言いたくない昔の事」
この頃の純は、ゴミ出すシュウと顔をあわせてもてもシカト。
そしてある朝、レイちゃんから電話があります。
「私ね、今日の午後、お嫁に行くの」
「ホントはね。今まで手紙を書いてたの。でもうまく書けないから・・純君の事、とっても好きだったわ。たぶん今も」
「いいのか。結婚する日に・・」
「大丈夫。今だけ。あとは鍵かけとく。ねえ、いつか10年ぐらい先に、私が子供連れて、純君も子供連れて、バッタリ、どこかで会えたらうれしいね」
「どうしたんだ?」
「ホントはね。今凄く怖いの。心細いの」
「覚えてるか。昔見たダスティンホフマンの卒業。あれやってやろうか」
「やって」
「どこで式あげるんだ?」
かくして、純はレイちゃんの結婚式に行き、こっそりと木影から見守ります。
しかし結局、「卒業」はやらず、ただ見送ります。
「不思議と気持ちの落ち込みはなかった。淋しさはあったけど」
「レイちゃんへの愛がはじけて、別のものになった気がした。別の、もっと深いものに・・」
「レイちゃん。おめでとう。綺麗だったよ」
――なんだろう、このシーン。
むろん純は、電話もらった時すでに、レイちゃんの事はふっ切ってるようでしたから、
まあ、「卒業」のごとく、さらわなかった気持ちはわかります。
問題はレイちゃんの気持ち。果たしてどうだったのか。
おそらく、本当にさらってほしかったのではないか。
そう思うのは、男の都合のいい解釈でしょうか?女性のみなさんどう思います?
男と女の愛というよりはもっと大きな人間愛が、この二人には芽生えてたのかな・・。
本当に好きな人とは結婚しないほうがイイなんて言う人もいるしなぁ・・・。
わかんないな~。しかしまあ、
相手の気持ちがはっきり分からず、妄想をふくらませ、あれこれ考えて。しかし結局よく分からないまま。
恋愛にはつきものですね。僕もあったなぁ~。
純が家に帰ると、五郎さんが来ていて。
「このまますぐ北時計へ行け。シュウちゃんが待ってる」
「父さん。もういいんだよ。終わったんだ」
「どうして」
「俺が悪いんだ」
「悪いと思ってるのか。だったらどうして謝らない」
「純、ゴミの車に乗るようになってから、ずいぶん手を洗うようになったな」
「お前の汚れはせっけんで落ちる」
「でも石鹸で落とせない汚れもある」
「人間長くやってりゃ、どうしたってそういう汚れがついて来る」
「お前にだってある。父さんなんか汚れだらけだ」
「そういう汚れはどうしたらいいんだ」
――そもそも、純はなんであんなにヤサグレてしまったのか・・・。
自分の彼女が過去にAVに出演していたと知ったら・・・。
そんなのカンケーネー。大事なのは今とこれからさ。と言ってやりたいけど。
そう言えない自分が嫌で・・・逃げて・・ヤサグレちゃったのかな・・。
その気持ちはわかるな・・・簡単には割り切れないよなぁ~。
でも、草太兄ちゃんや、お父さんにあったかい言葉かけてもらって
レイちゃんのことも吹っ切れて。
遠回りして、遠回りして、やっとちゃんとシュウと向き合う気になれた純。
約束の時間に大幅に遅れて喫茶店「北時計」に行ったらシュウはまだ待っていてくれて、
純に手紙を書いていた。
「読んであげる。昔の事黙っててごめんなさい。東京でのこと書きます・・・」
とAVに出演する事になった経緯、赤裸々に読み上げる。
ひとしお聞いて、純、その手紙ビリビリ破いて
「今度の日曜日。山部山麓デパートにいかねえか」
純がシュウに言った時
「遅いんだよ!!!」
と思わず、突っ込んでしまいました。
まあ、遅くても、ギリギリ間に合ってよかったけど。
みなさんはどう思います?
2020/8/11 改稿