「鬼滅の刃 無限列車編」映画感想
観てしまいました。
TVアニメシリーズはタイムリー放送時に全話観まして。
私的にはまずまず良かったという印象でした。
もう嫌でも耳に入っているかもしれませんが、ここでもざっと概要の説明をさせてもらいますね。
ざっくり言えば桃太郎的鬼退治の話です。
しかしここの鬼は元は人間で、鬼舞辻という鬼の始祖に噛まれたり故意に血を分け与えられたりして鬼となるわけですが。
その生態は様々で下級の鬼は本能むき出しに人を捕食するゾンビ的なものから、上級になってくると自我を持ち言葉も普通にしゃべり、人間の時の記憶も持ちながらその怨念を晴らしているものまでいたり。
基本的には人間を食べて生きているので、人間にとっては天敵であり、それに対抗する人間の精鋭部隊が鬼殺隊。
主人公の炭治郎はその新米隊員で、自身も家族を鬼舞辻に殺され、唯一、鬼になって生き残った妹を背中に背負って、鬼退治の任務に邁進するという話です。
まあ、アニメとしては昔から王道のドラゴンボール、ワンピースなどの系譜に通じる、異能力バトルものなんですが、それらと一線を画するのは、
主人公炭治郎が鬼に対して怒りや復讐心をぶつけて戦うのではなく、一定の敬意をもってその情念を鎮魂するというところが良いのです。
家族を殺されながらも鬼にされた妹はまだ人間に戻せる道があると思っているわけで。だから他の鬼に対してもただの勧善懲悪的な悪の天敵ではなく人間の延長として対峙する。鬼それぞれも人間だったころのいろいろな情念怨念を背負っている。鬼の世界でまた必死に生きようとしていたりする。そこを見定め、
敬意と愛情をもって戦う炭治郎の姿が胸を打つのでした。
もちろんそれは一つの私の見方で。普通に異能力バトルものとしても観てもテンポよく、多めのギャグを盛り込んで重くなりすぎず、武道精神の鍛練成長もの、仲間、師弟、家族の絆の話として観ることもできて。
幅広い世代にたいして、幅広い見方ができる作品なところがヒットの要因ではあるのでしょう。
それにしてもここ数か月の社会現象的過熱ぶりは異常ですね。
右見ても左見ても、鬼滅、鬼滅。コラボコラボ・・・。
それは鬼滅だけじゃないけど、昨今の社会世情として、一点集中全体主義というか、自主的な同調圧力に突き動かされている感じというか、
時代の閉塞感から来ているのかもしれないけど・・
どこか戦前の群衆気運に似た嫌なものを感じます。
そんなわけで劇場版に関してはまったく観る気も失せていたのですが・・・。
先日誕生日を迎えた妻に、「どこ行きたい?」と言ったら
あっさり「鬼滅」と言われ・・・・・それもなんかかわいらしく思えて・・
結局、観てしまったというわけです。
さて長い前置きでしたが、ここからが劇場版「無限列車編」の感想です。
公開中なのでなるべくネタバレなしで短くいきますよ。
予想よりは良かったです。
煉獄さんメインの話という事で。漫画は読んでないので煉獄さん、どんな人か知りませんでしたが、あの容姿、名前からしてもう暑苦しい正義漢なのは予想できますよね。
予想通り、暑苦しい正義漢でした。しかし最初から最後まで終始一貫して迷いない正義漢ぶりは、最近ではむしろ稀有で清々しく、ケチつける隙もありませんでしたよ。
TVアニメシリーズの鎮魂歌的部分も薄れてはいたけれど、根底にはしっかり流れていました。
今回の敵役の鬼は相手に夢を見せて眠らせるという鬼術を持っているのですが、炭治郎は家族が生きている時代の家に帰る夢を見させられます。
煉獄さんも、他の鬼殺隊の仲間たちもそれぞれの夢を見させられ眠ってしまいます。
人間の弱みにつけこんだ夢を見させて深く眠らせてから攻撃してくるという。
なんとも人間臭くて回りくどい鬼です。
そして鬼の世界にも上下関係があってこの鬼は下弦というランクで上弦ランクになろうと頑張っていたりと・・・
単純なゾンビ的悪ではないんですが・・・
結局は列車の乗客200人以上を殺して食おうとしているわけで、煉獄さんにしてみれば紛れもない悪で、200人の人間を守るために戦うだけ。
というお話です。
私的には炭治郎が家族の生きていた夢の世界から、家族を振り切って現実に戻ってきたシーンに心打たれたけれど。
そんなことはどうでもいいと思えるほどの
あまりに苛烈でまっすぐですがすがしい煉獄さんの姿には
このまま永遠に身をゆだねて観ていたい・・・・。
そんな気にさせられるのでした。