アニメ「ラストエグザイル」感想~細かい事気にせず観るとイイのよ~
───物語の舞台は砂時計型の人工惑星プレステール。世界は「アナトレー」と「デュシス」の大国とそれを管理する「ギルド」の三つの勢力に分かれていた。
主人公はアナトレーに暮らす、少年クラウスとその幼馴染の少女ラビィ。
二人は「ヴァンシップ」なる小型飛空艇のパイロットとナビ兼メカニックとして「空の運び屋」を営みながら、同じくヴァンシップ乗りだった二人の父親たちを飲み込んだ大嵐「グランドストリーム」を越える事を夢見ている───
「クラウディア機関」なる架空の飛行テクノロジーが発達している中世風の世界観に
「ラピュタ」と「スチームボーイ」と「キャプテンハーロック」合わせたような雰囲気。
主人公は男女の同じ飛空艇に乗る相棒で程良くロマンスもありそうで、モロ好きな感じ。
と、期待を胸に
もうずいぶん前にみていたのですが、
1話で挫折してたんです。
というのも1話中盤あたりでしたか、
「アナトレー」と「デュシス」の飛行船艦隊の戦闘シーン。
お互いの戦艦が同高度に並んでいて
パパパーンとラッパの合図かなんかで横の壁がガーと開くと
銃を持った兵隊がずらーっと並んでいて・・・
兵隊同士が無防備のまま撃ち合ってバタバタ死んでいく・・・
なんだこのバカバカしい戦い方・・・
そういうのが常識としてまかり通っている世界観なのかもしれないけど
知能のある人間のやる事として理解しがたい・・・・と
そのシーンからすっかり気持ちが入り込めず挫折していたんです。
今回はそこ、我慢して目をつぶって、気にせず先に進もうと決めて、
見はじめたら3話あたりからはもうすっかり引き込まれてしまいました。
この作品、非合理的な事が一つのテーマみたいなところがあるんです。
そこでいちいち引っかかってると、とても先に進めないんです。
例えばヴァンシップのデザインひとつとっても前が広がってて後ろがちぢまっているのも
飛行機の空力としては非合理的だし、必ず二人乗りでアクセルとハンドルを別々に分けているようなのも非合理的です。
とにかく細かい事気にせずなんとなく見る事をお勧めします。
そうすると急に世界観が輝きだしますよ。
───クラウスとラビィは別の運び屋からアルヴィスという少女を悪名高い海賊船のような戦艦の艦長アレックスロウに引き渡すという危険度星7つの仕事を引き継ぐ───
結局、「シルバーナ」というその戦艦の乗組員となりプレステールを揺るがす戦いの渦中に巻き込まれていくという話です。
この「シルバーナ」の乗組員たちがイカシタ大人たちで、ハーロックのような無口で渋い艦長のアレックス、美人副長のソフィア、ヴァンシップ隊の隊長のタチアナ。
その他整備士のオヤジらと人間ドラマが展開することとなり、そこがイイです。
ただ戦闘と、バトルを繰り返すだけの話になっていないんです。
また、アルヴィスを追いかけていたギルドの星型戦闘機乗りの指揮官ディーオがいいです。
はじめは敵としてクラウスたちの前に立ちはだかったけど、クラウスの飛行技術(インメルマンターン)に興味を持ち「インメルマン」とあだなをつけて無邪気にまとわりつくようになり、いつの間にかシルヴァーナに乗り込み、仲間になっている・・・。
このディーオの行動もかなり突飛で意味不明なところがありますが、とにかくあまり深く考えず見進めめてもらいたいです。
後半では深い感動を与えてくれるキーマンとなりますから。
ディーオ
艦長アレックス
副長ソフィア
とにかく、この作品ちょっと意味不明な、非合理的な事がちょいちょいあるのですけど、気にせずみてほしいです。
中盤以降、シルバーナとウルバヌスとの戦闘やクラウスたちヴァンシップ乗りたちの戦闘シーンは圧巻です。人間ドラマもシルヴァーナ乗組員の大人たちが要所を締めてくれます。
終わり方も賛否いろいろあるようですが
僕はこれはこれで満足ですね。うまくまとめたと思いますよ。
欲を言えば、2期が全く関係のない話になってるのが残念です。
クラウスとラビィのその後の話がまだまだ見たいな・・・。
そう思わせてくれる作品でした。
26話があっという間でみじかく感じました。
余談ですが
最近、日本の連続TVアニメ界、TVドラマ界もそうですが、
どうも「使い捨て」感が漂うと感じます。
何年も構想を練ってじっくり作りこんでいるという感じがしないですね。
スマホ普及により、人々は以前のようにTVにかじりつく事がなくなり
一生懸命お金と時間をかけても視聴率が取れない
だからそんなに力をいれてもしょうがない
という感じがありありと感じられる気がします。
瞬間的な「ギャグ」と「萌え」に力を入れ、内容に深みが無くワンパターン
アニメなら「学園超能力ギャグ萌え」ものばかりが目につきます。
ここ最近のアニメの作画の美しさは目を見張るものがありますが・・・。
その点この作品は作画こそ最近のアニメからは見劣りする部分もありますが
壮大な世界観を、圧倒的な戦闘シーンと躍動感と共に人間ドラマを奥行き深く描いている大人のアニメとして、最近では絶滅しつつある希少な作品だと思います。