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「リーチ先生」原田マハ 読書感想

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集英社文庫

初版 2019年6月

 

好いものは好い。
そう感じる私たち日本人の心には、きっと“リーチ先生”がいる。
日本を愛し日本に愛されたイギリス人陶芸家の美と友情に満ち溢れた生涯を描く感動のアート小説。
第36回新田次郎文学賞受賞作

 

若きイギリス人芸術家バーナード・リーチ

ロンドン美術学校で芸術を学ぶも、ルネッサンスを継承するような貴族中心のきらびやかな西洋美術にはどこか違和感を感じていた。

やがて、ジョン・ラスキン自然派芸術論に影響を受け、ラフカディオハーン(小泉八雲)の伝記を読み日本に強いあこがれを持つようになった。

そんなおり、留学中の一人の日本人青年、高村光太郎と出会い、日本への渡航を決意する。

光太郎の父、高村光雲邸に身を寄せ、

柳宗悦武者小路実篤志賀直哉、ら白樺派の若者たちと知り合い

交流を深めていく。

ある日、ゴッホセザンヌゴーギャンなどの絵画を日本に広め、西洋美術に傾倒していた柳に対し日本独自の芸術にもっと誇りを持つべきと反論したリーチが激しい口論になった。

その間に入った高村光太郎

「結局、君らは、お互いにけなしあっているのではなく、お互いに称賛しあっているのだよ。そうだろう」

と、仲を取り持つ。(このシーンは本当に素敵なシーンだったなあ)

その日から柳とリーチはむしろ親密な関係になり

連日どちらかの自宅に入り浸り、芸術論を熱く語りあう日々を過ごす。

やがて彼らは鑑賞物としての芸術よりも「実用の美」に重きを置く

民藝運動に傾倒していき・・・

リーチは自分の生涯をかけて追求することとなる「陶芸」に出会い・・。

 

と、そんな話です。

明治の文明開化に活躍した実在の文化人、芸術家らが実名で登場し

そのエピソードのほとんどは史実に基づいているそうです。

主人公だけが架空の人物だそうで・・・。

あっ、この物語の主人公はバーナード・リーチではなく、

彼の助手で通訳の沖亀之助。通称カメちゃん。

彼の視点でリーチの生涯が綴られていきます。

なので、カメちゃんの視点でリーチ先生なのです。

マハさん得意の半分リアル半分フィクションのAF(アートフィクション)だそうです。

カメちゃんは未婚の母一人に育てられた。

その母も8歳の時に亡くなり、母が働いていた食堂の主人に引き取られた。

その食堂が横浜の外国人がよく来る食堂で尋常小学校に通いながら給仕の仕事を手伝ううち英語が話せるようになってしまった。

そんな苦労人のカメちゃんの唯一の楽しみは絵を描くことだった・・。

食堂の壁に掛けてあったカメちゃんの絵が、たまたま客として訪れた高村光太郎の目に留まった縁で光雲邸の書生となり、同じ時期にイギリスからやってきたリーチの通訳をやりながら芸術家として師と仰ぐようになる。

そんな縁からリーチとカメちゃんは常に一心同体の師弟として、

お互いにかけがえのない絆を紡いでいく・・。

同じ陶芸の世界で切磋琢磨しあう仲間、濱田庄司河井寛次郎、富本憲吉らとも出会い・・・。

 

と、ここまで書けば、もうこの作品の面白さは想像できるでしょう。

この話は別に読者の想像を裏切ることを主としたサスペンス作品でもありません。

いつものマハさんブシで、温かくてやさしくて思いやりに溢れた人間関係の話です。

人の嫉妬など、ドロドロした業はほとんど描かれません。

そこはもう好みでしょうが・・・・

僕はこういうの好きです。

 

明治の文化人たちの熱気・・・。

「同人誌」って現代のSNSと性質は似ている気がするけど

なんかやっぱり熱量が違う気がしますね~

素敵だなあ~。うらやましいなぁ~って思ってしまいました。

 

 

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