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「星の子」今村夏子 読書感想

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初版 2019年12月 朝日文庫

 

初めて読む作家さんです。

芥川賞受賞作家さんという事は知らず

ふらっと入った書店で背表紙のあらすじに惹かれて

衝動買いでした。

そのあらすじとは

 

主人公・林ちひろは中学3年生。
出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、
両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、
その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく・・・・。
第39回 野間文芸新人賞受賞作。

 

「あやしい宗教」といっても本作の宗教は別に

人を殺したり監禁したりはしない。

ただ病気が治るという「特別な水」を使い水道水は飲まないとか。

その水をタオルに浸して頭に置きながら生活してるとか。

定期的に集会があって歌を歌ったり、出来事を発表したり、

信者同士で交流したり・・・。

そのぐらいです。

僕も学生時代「あやしい宗教」に入信してるクラスメイトから勧誘を受け、

集会に行ったことあるのですが

まさにその時の様子そのまんまで、その時の事思い出しました。

その時は合コン行こうと誘われて

ちょっと綺麗めなお姉さん当てがわれて、ちやほやされて・・・。

教祖らしき人の話は先祖を敬えとか家族を大切にしろとか要約すればそういう話で、そこまではまあ悪くなく、うっかりほだされそうになったのですが。

発表会になった時。教えのおかげで病気が治ったとか、大学に受かったとか、

片思いだった人と結婚できたとか、奇跡自慢大会になったあたりで異様な気配を感じ、二度とその集会にはいきませんでした。

この作品の宗教も何が悪いとは言えず・・

描かれるのも主人公ちひろとその周囲の人間関係のぽこぽこした日常です。

なんの事件も起きない・・

どこにでもある女の子の恋と友達と家族の話で。

文章も難しい表現はなく、読みやすいといえば読みやすいけど

作家らしいウイット感、クスッとさせるような表現もなく

あまり面白みはありません。

だけど何か歪んでいる・・・・。異様な気配が漂っている・・・。

例えば祖母の法要で、ちひろの両親だけが違うお経を唱えるとか。

その緊張感で、離れそうになる心を何とか繋ぎ止められるのでした。

 

日本人にとって宗教とはある程度距離を取って接するのがベターであり

何かの宗教に真剣に入信しているというと「あやしい」というレッテルを貼られがちなものです。海外では何かの宗教に入信していることは当たり前であり無宗教というほうが「あやしい」という事になるようですが。

歴史を紐解けば血なまぐさい争いの影に必ずいる宗教。

日本人の「あやしい」という感覚は、あながち単なるレッテルでもないのか・・。

それとも偏見なのか・・・。

僕の考えとしては

信じることはイイのだけど・・何か一つことを強く信じるという事は

そのほかの可能性に目を向けないという事で・・・

そこがやっぱり悪なんだと思うのです。

 

 

この作品のラストシーンをどう読むか意見の分かれどころで、

ハッピーな希望の話と読むか・・・

宗教入信の影に潜む不気味な心の闇の警鐘と読むか・・

僕は後者ですが

ほかの人の感想読んでみるとまたおもしろいです。

芦田愛菜主演で映画化されるようですね。

 

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