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「砂上」桜木紫乃 読書感想 ~理解と共感の狭間で~

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初版 2020年7月 角川文庫

 

主人公は40歳独身女、柊令央。ビストロでバイトしながら小説書いている。

離婚した元夫からの慰謝料を頼りに生活しているが、最近は滞りがち。

向こうも生活が厳しいと金額の値引きを打診されたり・・・。

直近、母が死んだらしいが、それにたいしての感情は希薄なようだ。

疎遠な妹がいるが、お互いにあまり干渉しあわないドライな関係だ。

この妹が実は娘で・・そのあたりの身の上話を私小説風にして書いていたのだが。

あちこちの文芸新人賞などに原稿を応募しては落選を続けている。

そんな落選原稿に目を止めて連絡してくる風変わりな女編集者小川乙三。

「あなたの身の上話など、誰も興味ありません」

と言いながら、その身の上話に興味を持ち、近づいてきて

「主体性のなさって、文章にでますよね」

とか、嫌味に富んだ抽象的な示唆で叱咤激励、指導鞭撻していくという話。

この乙三が助言する小説作法が、おそらく桜木さん自身の手法でもあって。

その手の内を赤裸々に明かしているとこが大きな読みどころだ。

しかしどこかにテレもあるのか・・抽象的な言い回しで煙に巻いている感じがあって

私的にはもどかしかった。

もっとはっきり言ってよ!(ちゃんと教えてよ!)って。

あとは、主人公の家族やビストロ親子、元夫らとの身の上話が

書いている小説の内容とリンクしてくという構成で。

令央は、常に主体性なく、まわりに流されて

そこはかとなく卑屈な虚無を漂わせ、自分を憂いていて。

他の登場人物たちも、なんか腹に一物を抱え、すれ違っていて・・。

この令央の身の上話をどう受け止めるかが、本作の好みの分かれるポイントだろうけど。

私としては。

結局、自分以外の他人のことは親子だろうが兄弟だろうが姉妹だろうが、

他人の気持ちを頭で理解することはできても感覚として共感はできない。

それはそれで仕方ないんだ。そういうものなんだ。

と、そんな事が描かれているように感じた。

あと感じたのは、男と女のどうしようもない違いかな。

この作品に出てくる男たちは特にしょうもない奴らばかりで。

著者の・・かどうかわからないけど男に対する冷たい視点が厳しい・・・。

どちらかと言えば女性向け作品かもしれない。

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