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「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子 読書感想

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初版 2014年10月 講談社文庫

 

あらすじ

入江冬子(フユコ)、34歳のフリー校閲者。人づきあいが苦手な彼女の唯一の趣味は、誕生日に真夜中の街を散歩すること。友人といえるのは、仕事で付き合いのある出版社の校閲社員、石川聖(ヒジリ)のみ。ひっそりと静かに生きていた彼女は、ある日カルチャーセンターで58歳の男性、三束(ミツツカ)さんと出会う・・・。

(アマゾン商品紹介より)

 

SNSで、「文章がきれい」「彼女の書く表現が好き」との声をたびたび目にして。

比較的若い女性層から支持されてるのかな、となんとなく気になっていた作家です。

しかしオッサンの私には合わないか?と躊躇していたところ。

たまたま立ち寄った古本屋で目に入った帯びの太田光さんのコメントが決め手となり購入。

なんだオッサンにも響くものなのか?と。

う~む。太田さん・・・。

好みはつくづく人それぞれだけど・・・・。

確かに詩的な美しい文章ではあるけれど・・・

意図的にひらがな多用して・・・なんか「あざとさ」感じてしまいました。

あざとくて何が悪いと言われれば、なにも悪くないですよ。

ただの好みの話です。

ストーリーの軸は34歳の主人公の冬子と58歳のおっさん三束さんのプラトニックな恋の話と、同じ34歳の聖との女同士の友情です。

引きこもりの中学生のような繊細な主人公の感じが僕にはあまりわからず、学生時代を振り返ってもそこまでの繊細さはなかったので・・・。

ただ最近こういうの好きな人多いのかなと思います。「聲の形」とか「リズと青い鳥」とかの世界観に近いような・・ああいうの好きな人はきっとツボにはまるでしょう。

僕はちょっと・・中高生の話ならまだしも、34歳と言われるとね

つい「おいおい!」と厳しい視線を向けてしまうのです。

 

 

いま、わたしは三束さんにさわれているんですか。それも、光と似ていますね、と三束さんはわたしに指さきをにぎられたまま言った。ふれるというのは、むずかしい状態です。

ふれているということは、これ以上は近づくことができない距離を同時に示していることにもなるから。(本文より)

 

これを儚くも美しい恋!言葉の芸術!と受け止めるか。

文章あざと!これ34歳と58歳?キモ!と受け止めるか。

それは人それぞれでいいんです。

僕は後者だったという事です。

ただ、1つイイと思ったのは聖の存在。

聖は複数のセフレとの関係を一定の距離感で楽しんでいて、

白黒ハッキリ物言い、汚れた現実を直視して生きている人。

冬子は34歳にしてほぼ処女で、ハッキリ物言えず、

自分の妄想世界を美化して生きている人。

終盤まではこの二人、そこそこ良好な関係を保ってるのだけど、

ラストではこの二人をケンカさせて、

しかし、最後は仲直りさせて・・・

どっちが善い悪いではなく

人は何歳だろうが、それぞれの生き方、価値基準があり、

自分の物差しで人を測ってはいけないよね。

とハッとさせられたのでした。

 

三束さんとの恋の顛末も冬子が自分の色眼鏡だけで彼を見ていた。

三束さんは優しさから、ついそれに話を合わせた。

という事ではないでしょうか。

あとの詳細は読んでのお楽しみという事で。

 

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